相続税専門税理士の富山です。
今回は、2種類の相続税対策ができる生命保険について、お話します。
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相続人が受け取った死亡保険金には非課税枠がある
相続税の計算においては、「遺産に係る基礎控除額」という相続税の非課税枠があり、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
で計算されます。
亡くなった方が保険料を負担していた死亡保険金については、この非課税枠とは別に、
500万円×法定相続人の数
で計算される非課税枠(非課税限度額)があります。
ただし、この非課税枠を使うことができるのは、その亡くなった方の相続人が受け取った死亡保険金だけです。
また、その相続人が相続放棄をした場合には、この非課税枠は適用できません。
法定相続人が2人(長男Bさん・次男Cさん)の場合、非課税枠は500万円×2人=1,000万円となりますが、長男Bさんが相続放棄をしたり、死亡保険金を受け取らなかった場合には、相続人Cさんの死亡保険金について1,000万円の非課税枠を適用することができます(相続放棄したらその分だけ非課税枠が減るとか、1人500万円しか適用できない、なんてことはありません)。
この非課税枠の活用により、ザックリ言うと、1,000万円の現金が手元にある場合、その1,000万円に相続税がかかりますが、その1,000万円で自分を被保険者とする生命保険に加入し、1,000万円の死亡保険金が相続人に支払われると、その1,000万円には(受け取ったのは同じ「1,000万円」なのに)相続税がかからない、ということになります。
相続税対策としての生前贈与をストップするモノ
生前贈与は、相続税対策として有効です。
亡くなる前に贈与することによって、相続財産を減らすことができるからです。
もちろん、生前贈与をすれば必ず相続税が安くなる、というワケではありません、
贈与税の課税方法は、暦年課税と相続時精算課税の2パターンがあるのですが、暦年課税のだと、贈与を受けた方が相続で財産を取得し、その贈与が亡くなる前3年(~7年)の間の加算対象期間の贈与に該当する場合、その贈与財産は相続税の課税対象になります。
つまり、相続直前(3~7年)に駆け込み贈与をしても相続税が課税される、という仕組みになっているのです。
また、相続時精算課税については、基本的にはその課税方法を適用した年分以後の贈与については、全て(令和6年以降の贈与については110万円の基礎控除を差し引いた残額が)相続税の課税対象となります。
相続税の課税対象になるかどうかの前に、贈与を受けたくても贈与が受けられなくなってしまう場合があります。
それは、贈与者(あげる人)が認知症などにより意思能力がない状態になった場合です。
意思能力がないと、贈与の意思表示ができないので、贈与が成立しません。
民法(一部抜粋)
(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
非課税枠を活用しつつ自動贈与機能を有する保険がある
「生存給付金付終身保険」というものがあります。
父Aさんが、この生存給付金付終身保険に加入したとします。
この保険契約には、その名前のとおり、生存給付金が支払われる機能があります。
ご存命である間にこの生存給付金が支払われます。
その受取人を長男Bさんにしておきます(死亡保険金の受取人も長男Bさんにしたとします)。
長男Bさんには、生存給付金が支払われます。
これはAさんからBさんへの贈与になります。
Aさんが亡くなった場合、Bさんには(支払われた生存給付金の分を控除した金額が)死亡保険金として支払われます。
これはどういうことかというと、その保険契約を結んだ後、その保険から生存給付金が支払われ、それが生前贈与として相続税対策になり、生存給付金として支払わなかった部分については、死亡保険金として支払われるため、それを相続人の方が受け取れば、死亡保険金の非課税枠を活用でき、これも相続税対策になる、ということになります。
認知症発症後も贈与続行+定期金に関する権利課税回避
生存給付金の支給(生前贈与)は、契約者が認知症になった場合でも続行されます。
その支給は、「みなし贈与」として(贈与者が贈与の意思表示をしなくても)贈与したモノとみなされます。
また、例えば100万円の生存給付金を10年間もらった場合、最初から1,000万円をもらう契約だった(それを10年間分割してもらっただけ)とみなされると、その全体の金額(全体だからと言って評価額は1,000万円にはなりません)に対して「定期金に関する権利」として一度に課税されてしまいますが、そうならないような契約内容(指定受取人にずっと支給することが確定していない)になっています。
想う相続税理士
生前贈与付収入保障保険という感じでしょうか。