相続税専門税理士の富山です。
今回は、遺言で土地を相続させる場合の注意点について、お話します。
遺言はどこまで有効?
遺産分けは、遺言があれば、その遺言により遺言者(遺言を書いた方)の意思が尊重されます。
亡くなった方の財産ですから、亡くなった方に財産の処分権があるのです。
民法(一部抜粋)
(包括遺贈及び特定遺贈)
第九百六十四条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。
しかし、それと同時に、兄弟姉妹以外の相続人には、この遺言者の意思によっても奪うことができない最低限の財産の取り分(遺留分)が認められています。
民法(一部抜粋)
(遺留分侵害額の請求)
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
また、遺言があっても、すべての相続人及び受遺者(遺言で財産をもらう方)の合意があれば、その遺言の内容に従わず、遺産分割協議により遺産分けをすることができます。
遺言があっても同意が必要な小規模宅地等の特例
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があります。
遺言がある場合、「遺言で遺産分けは決まっているから、財産の取得者が集まって話し合うことはないや」と思われるかもしれませんが、この小規模宅地等の特例の適用が可能な場合には注意が必要です。
この小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、この特例の対象となり得る宅地等を取得したすべての方の同意が必要だからです。
例えば、相続財産である土地は「土地イ」と「土地ロ」しかなく、Aさんが土地イ、Bさんが土地ロを取得し、上限面積の関係でどちらかにしか特例が適用できないという場合、どちらの土地に特例を適用するかを二人で話し合って決めなければならない、ということです。
付言事項を活用する
遺言には、遺産分け以外のことについても書くことができる「付言事項」というモノがあるのですが、このような場合、この付言事項により、「小規模宅地等の特例については『土地イ』で適用を受けて申告して欲しい」と書くことも検討しましょう。
その場合、なぜ「土地イ」なのか等の理由を書かないと、相続人の方もチンプンカンプンになってしまいます。
そのパターンの方が相続税の節税になる(全体で一番有利である)、とか、相続する土地について特例の適用を受けない(受けられない)Bさんについては、その分、相続する預金の金額を多くしてある、というようなことも書く必要があるでしょう。
そのためには、遺言者が小規模宅地等の特例について理解する必要もあります。
想う相続税理士