【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

亡くなった方の奥様名義の預金は相続財産(名義預金)とされた事例

相続税専門税理士の富山です。

今回は、生前贈与を受けたと主張する亡くなった方の奥様が、主体的にその財産の管理・運用をしていても、それだけでは贈与が成立しているとは言えない、とされた事例について、お話します。

Z258-11053
東京地方裁判所平成19年(行ウ)第19号相続税更正処分取消等請求事件(棄却)(控訴)
平成20年10月17日判決

Z259-11182
東京高等裁判所平成20年(行コ)第386号相続税更正処分取消等請求控訴事件(棄却)(確定)
平成21年4月16日判決


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管理・運用をしていても自分のものにはならない(贈与は成立しない)

財産の帰属の判定において、財産の管理及び運用をだれがしていたかということは重要な一要素となり得るものではあるが、夫婦間においては、妻が夫の財産について管理及び運用をすることがさほど不自然であるということはできないから、これを殊更重視することはできず、被相続人の妻が被相続人名義で被相続人に帰属する預金等の管理及び運用もしていたことを併せ考慮すると、被相続人の妻が妻名義の預金等の管理及び運用をしていたとしても、妻名義の預金等が被相続人ではなく妻に帰属するものであったことを示す決定的な要素であるということはできない

A名義預金等に係る取引は、Aがその手続を行い管理運用していたといえるとしても、その管理運用は被相続人の包括的同意あるいはその意向を忖度してなされていたものと認めるのが相当

受贈者(もらった方)だけがいくら張しても贈与は証明できない

被相続人の妻は本件調停の手続において一貫して本件妻名義預金等は被相続人から生前贈与を受けたものである旨主張していたから、本件妻名義預金等が妻の財産であるとする納税者の主張が、遺産分割調停においては、一方当事者が自己の取得する遺産の額を増やそうとするために、自己に有利な様々な主張をすることは通常考えられることであるから、妻が上記のように主張したからといって、真に生前贈与を受けた旨の認識を有していたかは明らかではないといわざるを得ない上、仮に妻が真に生前贈与を受けた旨の認識を有していたとしても、贈与の有無は受贈者の認識のみにより定まるものではないから、妻の本件調停における主張をもって本件妻名義預金等が被相続人から妻に贈与されたものであるということはできない

贈与契約書や贈与税申告は重要(この場合)

土地建物(居住用不動産)と金融資産とでは贈与税が賦課される範囲が異なることは控訴人ら主張のとおりであり、本件A名義預金等について、贈与契約書が作成されず、贈与税の申告がされなかったからといって直ちに贈与がなかったとはいい難いけれども、贈与契約書が作成されず贈与税の申告もされていないことが、贈与の具体的日時の特定を困難ならしめているうえ、贈与の事実そのものを否定する一つの事情にはなり得るものであることを否定できず、本件においては、それらのことやAが本件A名義預金等を解約して他の用途に使用するなどしたという事情が窺われないこと等に照らすと、被相続人からAに対し本件A名義預金等の生前贈与があったと認めるのは困難である。

解約したりしていないから自分のものにはならない

Aは、本件A名義預金等を管理運用していたことは認められるけれども、被相続人の意向にかかわりなくAが本件A名義預金等を解約して他の用途に使用するなど自己のものとして利得したことを認めるに足りる証拠はないから、本件A名義預金等がAに帰属しているものと認めることはできない

想う相続税理士

贈与が成立していたかどうかは、総合的に判断する必要があります。

特に夫婦間は、生計一(お財布が一緒の関係)の場合がほとんどでしょうから、贈与の成立を証明するのが難しい側面がありますので、ご注意を。

「あげたい」という気持ちがあったからといって、あげたことにはなりません。

被相続人以外の者の名義である財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かは、当該財産又はその購入原資の出捐者、当該財産の管理及び運用の状況、当該財産から生ずる利益の帰属者、被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係、当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯等を総合考慮して判断するのが相当