【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

借入金の金額が大きい場合には相続時精算課税贈与が有利

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続時精算課税による贈与と暦年課税による贈与は、同じ贈与でも債務控除の適用に違いがある、ということについて、お話します。


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相続時精算課税贈与には相続税が課税される

相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母・祖父母などから、18歳以上の子・孫などに対し、財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。

この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。

この制度を適用して贈与すると、累計2,500万円までの非課税枠(特別控除額)が使える代わりに、その贈与者が亡くなった場合、この相続時精算課税制度を適用した贈与財産は、相続税の課税対象になります。

その名のとおり、「相続」「時」に相続税がかかり「課税」「精算」されます。

相続開始前3年以内の暦年課税贈与には相続税が課税される場合がある

相続で財産を取得した方が、亡くなった方から相続開始前3年以内に暦年課税贈与により取得した財産には、相続税が課税されます。

「相続で財産を取得した方」の話なので、相続で財産を取得しなければ、その贈与財産に相続税はかかりません。

それでは、相続で財産を取得した方については、相続開始前3年以内に贈与により財産を取得した場合、相続時精算課税贈与でも暦年課税贈与でも同じように贈与財産に相続税が課税されるので、差はないのでしょうか?

相続税の計算構造に注意

ここで、相続税の申告書第1表の「課税価格の計算」欄の構成を見てみます。

  1. 取得財産の価額
  2. 相続時精算課税適用財産の価額
  3. 債務及び葬式費用の金額
  4. 純資産価額(①+②-③)(赤字のときは0)
  5. 純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額
  6. 課税価格(④+⑤)(1,000円未満切捨て)

相続時精算課税贈与財産は、上記の②に記載されます。

それに対して、暦年課税贈与財産は、上記の⑤に記載されます。

記載される場所が違うのです。

「でも、どっちにしろ相続財産の金額に加算されて相続税が課税されるんだから同じでしょ」と思われるかもしれませんが、そうではありません。

④欄をご覧ください。

「(赤字のときは0)」と書かれています。

つまり、この④欄の段階でマイナスになった場合、そのマイナスはないものとされてしまうのです。

具体例を挙げてみましょう。

相続人Aさんがアパートの土地建物1億円を相続し、アパートローン1億2,000万円を引き継いだとします。

この場合、課税価格の計算欄は、

  1. 1億円
  2. 1億2,000万円

となります。

その上で、相続人Aさんが、相続時精算課税贈与2,000万円を受けていたとします。

この場合、課税価格の計算欄は、

  1. 1億円
  2. 2,000万円
  3. 1億2,000万円
  4. 0円
  5. 0円
  6. 0円

となり、相続税はかかりません。

そうではなく、相続人Aさんが、相続開始前3年以内に暦年課税贈与2,000万円を受けていたとします。

この場合、課税価格の計算欄は、

  1. 1億円
  2. 0円
  3. 1億2,000万円
  4. 0円
  5. 2,000万円
  6. 2,000万円

となり、相続税がかかる可能性が出てきます。

つまり、相続時精算課税贈与財産は債務控除の対象となるのに、暦年課税贈与財産は債務控除の対象とはならないのです。

想う相続税理士

相続税はプラスの財産から債務等のマイナスの財産を控除して課税対象を計算するため、債務があればその分、相続税が安くなる(節税になる)のですが、遺産分けの仕方や贈与制度の選択により、債務が節税効果を生まない場合がありますので、ご注意を。