相続税専門税理士の富山です。
今回は、未成年者への贈与及び未成年者の保険の契約は可能か、ということについて、下記の裁決事例を交えながら、お話します。
出典:TAINS(J27-4-01)
(相続税の課税財産-保険金) 毎年保険料相当額の贈与を受けその保険料の支払に充てていた場合における受取保険金は、相続により取得したものとはみなされないとした事例(全部取消し)(昭和56年分相続税・昭59-02-27裁決)
税金の種類が多いと税金が安くなる?
相続税も所得税も超過累進課税です。
相続財産の金額(正確には「課税遺産総額のうち法定相続分に応ずる取得金額」)が多ければ多いほど、儲け(所得金額)が多ければ多いほど、相続税・所得税は高くなります。
逆に言うと、相続財産が多く高額な相続税が課税されることが予想される半面、相続人となる方の所得が少ない場合、その相続税の課税対象となる金額を、所得税の課税対象となる金額に変えることができれば、相続税は減って所得税は増えますが、(高税率の)多額の相続税が減って(低税率の)少額の所得税が増えるため、相対的には税金が安くなることが予想されます。
死亡保険金を受け取った場合の課税関係
死亡保険金を受け取った場合には、「契約者(保険料負担者)」・「被保険者」・「保険金受取人」によって、課税関係が変わります。
父が自分に保険を掛けて、子が死亡保険金を受け取った場合、その死亡保険金は相続税の課税対象となります。
子が父に保険を掛けて、子が死亡保険金を受け取った場合、その死亡保険金は所得税の課税対象となります。
父が自分に保険を掛ける代わりに、子にお金を贈与し、子がそのお金で父に保険を掛けた場合、その死亡保険金は、相続税の課税対象ではなく所得税の課税対象になります。
子が未成年の場合でも、このようなことができるのでしょうか?
税務署が相続財産とした更正処分が取り消された事例
出典:TAINS(J27-4-01)(一部抜粋)
未成年者である請求人が受け取つた保険金については、1)その保険契約を被相続人が親権者として代行し、保険料の支払に当たつては、その都度被相続人が自己の預金を引き出して、これを請求人名義の預金口座に入金させ、その預金から保険料を払い込んだものであること、2)保険料は、被相続人の所得税の確定申告において生命保険料控除をしていないこと、3)請求人は、贈与のあつた年分において贈与税の申告書を提出し納税していることから請求人は贈与により取得した預金をもつて保険料の払込みをしたものと認められるので当該保険金を相続財産とした更正処分は取消しを免れない。
「(父が子にお金を贈与して子が親に保険を掛けたように見えるが)実質的に父が保険の契約と保険料の負担をした」とする税務署の処分が取り消されました。
想う相続税理士