相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続が発生して相続税の申告をする場合に、一人の税理士に依頼せず、相続人がそれぞれ別々の税理士に依頼した方がいいのか、ということについて、お話します。
相続税の申告を別々の税理士に依頼することは可能
Aさんが亡くなり、Bさん・CさんがAさんの財産を相続で取得し、その相続税の申告を税理士に依頼する場合、通常、Bさん・Cさんは一人の(同じ)税理士にその申告を依頼します。
しかし、BさんとCさんの仲が悪かったり、BさんとCさんにそれぞれ別の顧問税理士がいて、それぞれの顧問税理士に相続税の申告もして欲しい、と考えるような場合には、同じ相続に係る相続税申告を別々の税理士が提出する、ということもあり得ます(仲が悪くても同じ税理士が相続税の申告をすることはあります)。
相続税の申告を別々の税理士に依頼する小さなデメリット
相続税の申告を別々の税理士に依頼すると、その分、費用と手間が多くかかります。
相続税の計算は、相続人毎に計算するワケではありません。
例えば、Bさんが自分の相続税申告を税理士Xに依頼した場合、税理士XはBさんが取得した財産だけでは相続税は計算できません(Cさんが税理士Yに依頼した場合も同じ)。
Cさんが取得した財産も含めて(つまりAさんの全財産を元に)相続税を計算するのです。
ですから、税理士Xと税理士Yは、基本的には(全財産を元にした)同じ計算をするのです。
別々の税理士に依頼するということは、1回依頼すれば済むことを、2回依頼するような感じになる、ということです。
その分、費用もかかりますし、書類のやり取りなどの手間もかかってしまいます。
でも、「お金や手間がかかってもいいから一緒には申告したくない」という方にとっては大したことはないかもしれません。
相続税の申告を別々の税理士に依頼する大きなデメリット
税理士Xと税理士Yが別々に相続税の申告をした場合、その申告書に記載された財産の評価額や相続税の金額が一致しないことがあります(ほとんどの場合、一致しません)。
つまり、同じAさんの相続なのに、金額の異なる相続税の申告書が税務署に提出されることになります。
この場合、税務署は次のどれかだと考えるでしょう。
- 税理士Xの申告が間違っているため、数字にズレがある
- 税理士Yの申告が間違っているため、数字にズレがある
- お互いの情報共有がされていないため、税理士Xの申告・税理士Yの申告のどちらも間違っている
必然的に税務調査の確率が高くなります。
もし、このような状況を避けたいのであれば(それでも別々の税理士に依頼したいのであれば)、税理士Xと税理士Yが連絡を取り合って、申告書の内容を一致させるしかありません。
しかし、ある特定の財産を相続財産に含めるかどうかについて、Bさん側とCさん側で見解が分かれる場合もあり得ますし、個々の財産の評価について、税理士Xと税理士Yで見解が分かれることも予想されます。
したがって、別々の税理士が提出する相続税の申告書の内容を一致させるのは難しいと思われます。
想う相続税理士
これは、一定の土地について評価額を減額できる特例なのですが、面積制限があるため、Bさんが取得した土地、Cさんが取得した土地、どちらかにしか適用できない、というようなことが起こります。
このような場合、どちらの土地に特例を適用するかを話し合って決める必要があります。
税理士Xの提出する申告書ではBさんが、税理士Yの提出する申告書ではCさんが、それぞれ特例の適用を受ける、という内容になっていると、アウトです。