相続税専門税理士の富山です。
今回は、耕作されている土地が相続税の申告上、何の地目(土地の種類)に該当するか、ということについて、お話します。
相続税申告における土地評価の地目の判定の拠り所
財産評価基本通達の前文には、次のような記述があります。
財産評価基本通達(一部抜粋)
前文・説明文
相続税及び贈与税の課税価格計算の基礎となる財産の評価に関する基本的な取扱いを下記のとおり定めたから、法令に別段の定めのあるもの及び別に通達するものを除き、昭和39年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産については、これにより取り扱われたい。
つまり、相続税申告における土地評価は、この財産評価基本通達に従う、ということになります。
さらに、この財産評価基本通達の中で、
財産評価基本通達(一部抜粋)
7 土地の評価上の区分
地目の判定は、不動産登記事務取扱手続準則第68条及び第69条に準じて行う。
と書かれているため、その不動産登記事務取扱手続準則を見てみます。
不動産登記事務取扱手続準則(一部抜粋)
(地目)
第68条 次の各号に掲げる地目は、当該各号に定める土地について定めるものとする。
この場合には、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存す
るときでも、土地全体としての状況を観察して定めるものとする。
(1) 田 農耕地で用水を利用して耕作する土地
(2) 畑 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地
(3) 宅地 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地
(11) 原野 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地
(23) 雑種地 以上のいずれにも該当しない土地
耕作されていれば畑?
上記を見ると、耕作されている土地は畑に該当しそうです(用水を利用していれば田)。
ここで、農地法を見てみます。
農地法(一部抜粋)
(定義)
第二条 この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい
この「耕作の目的に供される土地」とは、現に耕作されている土地だけでなく、現在は耕作されていなくても耕作しようとすればいつでも耕作できるような、客観的に見てその現状が耕作の目的に供されるものと認められる土地も含むものとされています。
上記に該当すれば、耕作されていない「休耕地」「不耕作地」も農地となり、畑となります。
この「耕作しようとすればいつでも耕作できる」というのは、簡単に農地に復元できる場合です。
そうではない場合(長期間放置されていたために雑草等が生育しているような状況の場合)には、「雑種地」(または「原野」)と判定することになります。
農地は農地法の影響を受けることに留意する
農地法(一部抜粋)
(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
第三条 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。(農地の転用の制限)
第四条 農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に関する施策の実施状況を考慮して農林水産大臣が指定する市町村(以下「指定市町村」という。)の区域内にあつては、指定市町村の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。(農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限)
第五条 農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。
相続後に上記の許可を受けたという場合には、その土地が「法律上(農地法上)」農地だった、ということになります(登記地目も農地のハズです)。
農地は農地法の影響を受け、自由に使ったり処分したりすることができないため、いくら相続税は実態・現況で判断・評価する、といっても、その形式的な部分も軽視できません。
実態・現況で地目を判断するのはいいのですが、完全に「宅地」「雑種地」等になっている場合以外は、そのような法律上の制約を受けている土地である(農地として考えるべき傾向が強い)、ということに留意して判断する必要があります。
家庭菜園は農地に該当する?
租税特別措置法関係通達(一部抜粋加工)
70の4-1 農地又は採草放牧地の意義
ただし、現に耕作されている土地であっても、いわゆる家庭菜園や通常であれば耕作されないと認められる土地、例えば、運動場、工場敷地等を一時、耕作しているものは、農地に該当しないことに留意する。
家庭菜園については、自宅の庭の一部、つまり、宅地の一部となっていることが多いと思われます。
そのような場合には、原則として「宅地」に該当します。
ただし、自宅に隣接していたとしても、その規模が大きい場合には、たとえ農作物を出荷していなかったとしても、農地に該当すると判断すべき場合も考えられます。
想う相続税理士
地目の判定は評価単位の判断につながります。
大変重要ですので、ご注意を。