相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税申告における葬式費用について、お話します。
葬式費用を負担すると相続税が安くなる
相続人の方などが、亡くなった方の葬式費用を負担した場合には、相続税の申告において、財産の金額から葬式費用の金額を控除して、相続税の計算をすることができます(「債務控除」と言います)。
1,000万円の財産を相続し、100万円の葬式費用を負担した場合には、1,000万円に対して相続税を計算するのではなく、「1,000万円△100万円=900万円」に対して相続税を計算するのです。
つまり、葬式費用を負担すれば、その分、相続税が安くなるのです。
想う相続税理士秘書
配偶者には元々相続税がかからない(ことが多い)
葬式費用を負担すれば相続税は安くなるのですが、配偶者が負担した場合には、その効果が出ない場合があります。
葬式費用を負担しなくても、相続税が発生しないことが多いからです。
なぜ発生しないかと言うと、配偶者は「配偶者の税額軽減」という特例を適用することができ、配偶者の方が取得した財産については、
- 財産のうち配偶者の法定相続分(お子さんがいる場合には1/2)相当額
- 1億6,000万円
「最低でも1億6,000万円」の非課税枠がある、ということです。
葬式費用を負担しなくても相続税がゼロになる配偶者が葬式費用を負担しても、相続税は変わらない(葬式費用を負担しても相続税が安くならない)のです。
逆に、葬式費用を負担すれば相続税が安くなる方がいても、配偶者が葬式費用を負担することにより、債務控除のチャンスがなくなってしまうのです。
ご一家の合計で一番相続税が安くなるように相続税の申告をしたい、という場合には、配偶者以外の方が葬式費用を負担した方がいいのです。
相続を放棄したら葬式費用の債務控除はできない?
相続税の節税のためには、配偶者ではなく、例えば、長男が葬式費用を負担した方がいいのですが、もし、その長男が相続放棄をしている場合には、長男が葬式費用を負担しても、相続税の節税にはならないのでしょうか?
相続税法(一部抜粋加工)
13-1 相続を放棄した者等の債務控除
相続を放棄した者及び相続権を失った者については、法第13条(「債務控除」)の規定の適用はないのであるが、その者が現実に被相続人の葬式費用を負担した場合においては、当該負担額は、その者の遺贈によって取得した財産の価額から債務控除しても差し支えないものとする。
相続放棄をした方でも、生命保険金を取得することができ、その生命保険金は相続税の課税対象となります(相続放棄をすれば、相続税と無関係になれるかと言うと、そんなことはないのです)。
相続放棄をした方は、相続放棄をしなければ相続人のお立場であり、亡くなった方と極めて近い関係にあるため、相続放棄をしていても葬式費用を負担する、ということは自然なことです。
そのような点を考慮して、相続を放棄した方でも、葬式費用については、債務控除ができる、という取扱いになっています。
想う相続税理士
その上、相続税が安くなるのですから、誰が負担するのか、きちんと検討して決めましょう。