相続税専門税理士の富山です。
今回は、同族会社の株式を計算する際の「非経常的な利益」について争われた事案について、お話します。
たまたま発生した利益は除外して計算できる
亡くなった方が親族で経営している会社の役員だったりして、相続財産の中にその同族会社の株式がある場合、上場されていませんから、過去の決算書等を元に、株価を計算する必要があります。
その計算の中で、「類似業種比準価額」というモノを算定する際、会社の過去の利益などを元に計算するのですが、その算定期間において、たまたま臨時的・偶発的に発生した利益がある場合、それを「非経常的な利益の金額」として、計算対象となる利益の金額から除外することができます。
固定資産売却益は利益から除外できる?
通達には、次のように書かれています。
財産評価基本通達(一部抜粋加工)
183 評価会社の1株当たりの配当金額等の計算
「1株当たりの利益金額」は、直前期末以前1年間における法人税の課税所得金額(固定資産売却益、保険差益等の非経常的な利益の金額を除く。)に、(以下省略)
これだけ見ると、固定資産売却益は非経常的な利益として、除外できそうですよね。
事業の一環として反復継続的に行われていれば非「非経常的な利益」
損益計算書の特別利益に計算されるような固定資産売却益、保険差益などであったとしても、その会社の事業内容やその利益の発生状況等によっては、非経常的な利益に該当しないこともあります。
出典:TAINS(F0-3-555)
取引相場のない株式の評価について、クレ-ン事業を営む評価会社のクレーン車売却益は、類似業種比準価額により評価するときの「評価会社の1株当たりの利益金額」の計算上、法人税の課税所得金額から除くべき「非経常的な利益の金額」に当たらないとされた事例
想う相続税理士秘書
ある利益が固定資産売却益に計上されていたとしても、業種やその利益の発生原因等によってはその利益が必ずしも非経常的な利益の金額となるものではなく、また、株式の価額に反映すべき経常的な収益力は評価会社によって様々であることから、ある利益が経常的な利益の金額に該当するか非経常的な利益の金額に該当するかは個別に判断すべきであり、その判断に当たっては、その利益が評価会社の損益計算書の経常利益又は特別利益のいずれに計上されているかのみをもって判断するのではなく、評価会社の事業の内容、その利益の発生原因、その発生原因たる行為の反復継続性又は臨時偶発性等を考慮するのが相当である
本件法人は、本件法人の経常的な事業である本件クレーン事業を営利事業として継続・維持するに当たり、クレーン車の売却による収益力を見越した上で、クレーン車の取得及び売却を本件クレーン事業と一体をなすものとして捉えて、本件クレーン事業の一環としてクレーン車の売却を行っていたものと認められ
本件法人は、クレーン車の売却を本件クレーン事業の一環として行っており、直前各3事業年度において、毎期、相当数のクレーン車を繰り返し売却し、その売却台数も年々増加させていたことを考慮すれば、本件法人によるクレーン車の売却は反復継続的に行われていたと評価するのが相当
以上によれば、本件売却益は、非経常的な利益の金額に該当しない
想う相続税理士