相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続時精算課税贈与を受けた障害者である「子」が、特定贈与者である「親」よりも先に亡くなった場合の相続税申告における注意点について、お話します。
障害者の方には相続税の税額控除制度がある
相続税法(一部抜粋)
第19条の4 障害者控除
相続又は遺贈により財産を取得した者(第1条の3第1項第2号から第4号までの規定に該当する者を除く。)が当該相続又は遺贈に係る被相続人の前条第1項に規定する相続人に該当し、かつ、障害者である場合には、その者については、第15条から前条までの規定により算出した金額から10万円(その者が特別障害者である場合には、20万円)にその者が85歳に達するまでの年数(当該年数が1年未満であるとき、又はこれに1年未満の端数があるときは、これを1年とする。)を乗じて算出した金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。
相続(遺言による「遺贈」を含む)により財産を取得した時に日本国内に住所があり(一定の方を除く)、かつ、障害者である法定相続人の方については、相続税の金額から、
障害者控除額=10万円(特別障害者の場合には20万円)×満85歳になるまでの年数
を差し引くことができます。
控除額が余ったら他の相続人の相続税から差し引ける!
また、その障害者の方の相続税の金額が、計算された障害者控除額よりも少ない場合、例えば、相続税の金額が50万円で、障害者控除額が200万円の場合、残りの150万円は、その障害者の方の扶養義務者(配偶者、直系血族及び兄弟姉妹の他、三親等内の親族のうち一定の方)の相続税の金額から差し引くことができます。
例えば、ご長男の方が障害者(相続税:50万円・障害者控除額:200万円)で障害者控除額が150万円余った場合、ご次男の方の相続税の金額から、その150万円を差し引くことができるのです。
障害者である子が先に亡くなっていたらどうなる?
60歳以上の父または母(「特定贈与者」と言います)から、18歳以上の子に財産を贈与した場合、一定の要件を満たせば、その贈与について、「相続時精算課税」という課税制度を選択することができます。
この制度を選択すると、その特定贈与者からの贈与については2,500万円まで贈与税がかからない代わりに、その贈与財産には相続税が課税されます。
子が障害者でもこの制度を選択することができるのですが、万が一、特定贈与者よりも先に亡くなった場合には注意が必要です。
特定贈与者に相続があった場合、その特定贈与者の相続に係る相続税申告においては、その時点ではその障害者である子はいらっしゃらない(既に死亡されているため相続人には該当しない)ため、障害者控除の適用を受けることができません。
また、その障害者の方はいらっしゃらないので、他の相続人の方は扶養義務者になり得ません。
想う相続税理士