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民法改正で遺産分割協議に10年の期限が設けられたって本当?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、2021年の民法改正について、お話します。

この記事の結論
この民法改正の趣旨は、具体的相続分(下記参照)による分割を求める相続人に対して、「10年以内に遺産分けを決めないと、その分割を主張しても認められなくなっちゃう可能性がありますよ」とアピールすることにより、早期の遺産分けを促し、10年を経過したら、法定相続分という画一的な割合で円滑に遺産分けが行われるようにしよう、というモノです。

10年を経過すると、国が勝手に法定相続分で遺産分けをしてくれるワケではありませんし、また、10年を経過しても、相続人全員が具体的相続分により遺産分けをすることに合意すれば、具体的相続分による遺産分けが可能です。


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相続があったら遺産分けってどうやってやればいいの?

相続があった場合、ザックリ言うと、その亡くなった方の財産は、相続人の共有状態になり、その状態から、それぞれの財産を各相続人のモノにするのが、遺産分け(遺産分割)です。

この遺産分けについては、民法において次のように定められています。

民法(一部抜粋加工)
(遺産の分割の協議又は審判)
第九百七条 共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。

「遺産分割協議により、いつでも遺産分けをしていいよ」ということです。

「具体的相続分」とは?

民法では、画一的に遺産分けの割合が定められています。

民法(一部抜粋)
第二節 相続分
(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

「基準」的なモノですから、必ずこの割合で遺産分けをしなければならない、というワケではありません。

この法定相続分で遺産分けをすると、不公平になる(と考えられる)場合があります。

生前に亡くなった方の「介護にご尽力」された方がいらっしゃれば、法定相続分よりも財産を多く取得したい、と考えるでしょうし、また、他の相続人の方が亡くなった方から「生前に多額の贈与」を受けていれば、贈与を受けていない方は、相続の時にはその分、財産を多く取得したい、と考えるハズです。

これらを加味・調整したモノが、「具体的相続分」です。

10年を経過すると具体的相続分で計算できない?

民法改正により、新たに次のような規定が設けられました。

民法(一部抜粋加工)
(期間経過後の遺産の分割における相続分)
第九百四条の三 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

上記の「前三条」の内容は、以下のとおりです。

  • 第九百三条:特別受益者の相続分
  • 第九百四条:前条に規定する贈与の価額
  • 第九百四条の二:寄与分

先ほどお話した「生前に多額の贈与」などが、「特別受益」に該当します。

また、「介護にご尽力」などが、「寄与分」に該当します。

つまり、10年経過すると、原則として、特別受益や寄与分は主張できなくなるため、法定相続分をベースに遺産分けをする、ということになります。

想う相続税理士

遺産分けが早まれば、土地の相続登記も早まり、所有者不明土地問題に対しても有効である、と考えられています。