【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続人が事業を承継したら簡易課税の選択も相続することになる?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続により亡くなった方の営んでいた事業を承継した相続人の方の、消費税の計算方法の選択について、お話します。

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亡くなった方が簡易課税を選択していたら相続人も簡易課税?

消費税の計算方法には、本則課税と簡易課税があります。

本則課税が原則であり、簡易課税を選択するためには、「簡易課税制度選択届出書」を提出しなければなりません。

いつまでに提出しなければならないかというと、通常は、簡易課税の適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(つまり、来年から適用を受けようとするのであれば今年の末日)であり、事業を開始した日の属する課税期間(つまり最初)から簡易課税の適用を受けようとする場合には、その事業開始課税期間(第1期)中に提出しなければなりません。

この届出書の提出により簡易課税を選択していた方がお亡くなりになった場合、その事業を承継した相続人の方は、亡くなった方の計算方法(簡易課税)も承継するのかというと、そんなことはありません。

自分も簡易課税で消費税を計算したいのであれば、「簡易課税制度選択届出書」を提出しなければならないのです。

消費税法基本通達(一部抜粋加工)
13-1-3の2 相続があった場合の簡易課税制度選択届出書の効力等
相続があった場合における簡易課税の規定の適用は、次のようになるのであるから留意する。
(1) 被相続人が提出した簡易課税制度選択届出書の効力は、相続により当該被相続人の事業を承継した相続人には及ばない。したがって、当該相続人が簡易課税の規定の適用を受けようとするときは、新たに簡易課税制度選択届出書を提出しなければならない。

事業を承継した相続人の方の届出書の提出期限は?

(2) 事業を営んでいない相続人が相続により被相続人の事業を承継した場合又は個人事業者である相続人(下記但し書きに該当しない「免税事業者」)が相続により簡易課税の規定の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合において、当該相続人が相続があった日の属する課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出したときは、当該課税期間は、令第56条第1項第1号《事業を開始した日の属する課税期間》又は第2号《相続があった日の属する課税期間》に規定する課税期間に該当する。

下記のいずれに該当する場合には、亡くなった年の12月31日が、「簡易課税制度選択届出書」の提出期限となります。

  1. 亡くなった方の事業を承継した相続人の方が、いままで事業をやってこなかった(今回事業を承継して初めて個人事業者になる)場合
  2. 簡易課税を選択していた亡くなった方の事業を承継した相続人の方が、既に相続前から免税事業者の個人事業者である場合

ただし、当該課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超え、課税事業者に該当する個人事業者が相続により簡易課税の規定の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合の当該課税期間は、令第56条第1項第2号に規定する課税期間には該当しない。

消費税法施行令(一部抜粋加工)
第56条 事業を開始した日の属する課税期間等の範囲
簡易課税に規定する事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間は、次に掲げる課税期間とする。
二 個人事業者が相続により簡易課税の規定の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合における当該相続のあつた日の属する課税期間

ただし、下記の場合には、亡くなった年の12月31日までに「簡易課税制度選択届出書」を提出しても、その亡くなった年については、簡易課税は適用できません。

  1. 簡易課税を選択していた亡くなった方の事業を承継した相続人の方が、既に相続前から本則課税の課税事業者の個人事業者である場合

亡くなった年の12月31日までに提出できない場合には?

亡くなった日が年末ギリギリだった場合など、期限までに提出できないことについて、やむを得ない事情がある場合には、下記の申請書での対応を検討しましょう。

  1. 「消費税課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」
  2. 「災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」

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個人事業者の方が亡くなった場合には、消費税についての検討もお忘れなく。