相続税専門税理士の富山です。
今回は、遺産分割協議において代償分割金をもらうことになっていたものの、その代償分割金がもらえないため、その遺産分割協議を解除し、相続税の更正の請求をしたけれども、税務署に認められなかった、という事例について、お話します。
代償分割は話がまとまりやすい遺産分けの方法
遺産分けにおいて、一人の相続人の方が全財産を相続する代わりに、その他の相続人の方は、その全財産を相続する相続人の方から代償分割金をもらう、という「代償分割」の方法を取る場合があります。
極端な例を挙げると、相続財産が自宅の土地建物しかない、というような場合、その現物資産を分けようとすると、その自宅の土地建物を共有で相続するか、もしそうした場合には、その自宅の土地建物が自分にとって何の関係もない相続人にとっては、その土地建物を相続して相続税を払うのも大変なので、共有で相続した後に売却する、なんてことになり、同居してそこに住んでいた親族は、泣く泣くその家を出ていく、なんてことも起こり得ます。
その同居していた親族が自宅の土地建物を相続し、その代わりに自分の持ち金で他の相続人に代償分割金を支払うことで遺産分けがまとまれば、その同居していた親族は引き続き、そこに住むことができます。
また、代償分割金をもらう相続人の方も、「現金でいくら」という形で財産を取得することになるため、納得しやすいという面があります。
代償分割は代償分割金が支払えないとできない
当たり前の話なのですが、代償分割は、支払う代償分割金の原資がないと成立しません。
先ほどの例ですと、相続財産が自宅の土地建物しかなければ、同居親族は自分の持ち金で支払うしかありません。
現金や預貯金も相続できれば、それを元に代償分割金を支払うことができます。
現金や預貯金がなくても、他に売ってもいい土地を相続できれば、その土地を売却してお金に換えて、代償分割金を支払うことができます。
「代償分割金が支払えないから遺産分けをやり直す」が税務署に認められなかったケース
相続した不動産が想定した金額で売却できないことにより、代償分割金を支払ってもらえないので、遺産分割協議をやり直し、代償分割金をもらわないことにした、だから、もらう前提で相続税を納めた相続税の申告をやり直したい、と更正の請求をしたものの、認められなかった、という事例があります。
出典:TAINS(Z264-12413)
代償債務の不履行を理由として遺産分割協議をやり直した場合に、国税通則法23条2項3号(当時)による更正の請求は認められないとした事例
7 平成6年遺産分割協議から約16年が経過した後に、丁からの各代償債務の履行が望めないとして、平成6年遺産分割協議に基づく連帯納付義務を免れるために、平成6年遺産分割協議を合意解除することは、通則法施行令6条1項2号にいう「やむを得ない事情」には該当しないというべきである。
8 したがって、平成6年遺産分割協議が「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され」た(通則法施行令6条1項2号)ということはできない。
想う相続税理士