相続税専門税理士の富山です。
今回は、亡くなった方が固定資産税を支払っていて、それを事業の必要経費に算入している場合の申告上の注意点について、お話します。
相続税申告で債務控除できるのはどの部分?
相続税の申告においては、土地や預貯金などのプラスの財産をベースに相続税を計算するのではなく、借入金などの「債務」や葬儀会社への支払などの「葬式費用」を控除(これを「債務控除」と言います)した残額を基に相続税を計算します。
亡くなった方の「債務」は、通常、相続人の方が代わりに支払うことになりますが、この「債務」は借入金だけではなく、クレジットカードで買い物はしたけれど、引き落としがまだで代金を支払っていない、いわゆる「未払金」も含まれます。
これは、固定資産税の未払分についても同様です。
ただし、相続税の申告のおける「固定資産税の未払分」の考え方には注意が必要です。
固定資産税は、原則として、その年の1月1日現在の所有者が納税義務者となります。
1月1日に納税義務が成立しているのです。
令和5年1月2日に亡くなっても、令和5年1月1日に土地等を所有している場合、1年分の固定資産税(「年税額」)を納める必要があるのです。
ですから、相続税の債務控除の対象となる固定資産税は、「年税額から亡くなった日までに支払った分を除いた残額」ということになります。
所得税の準確定申告で必要経費に算入できるのはどの部分?
亡くなった方の確定申告(準確定申告)は4ヶ月以内にしなければなりません。
亡くなった方が事業を営んでいて、お持ちの土地などの固定資産税をその事業の経費にしている場合、その固定資産税の年税額のうち、準確定申告の必要経費に算入した残りを、その事業と土地などを引き継いだ相続人の方などが自分の確定申告で経費にします。
準確定申告で必要経費に算入した金額と、引き継いだ方の確定申告で必要経費に算入した金額を合計すれば、年税額(1年分)になる、ということです。
では、準確定申告で経費になるのはどの部分かというと、いくつかパターンがあり、そのパターンの中でもいくつか選べる場合があります。
納税通知書が届いていない場合
亡くなった日において市区町村役場から納税通知書が届いていない場合、経費に落としたくても、その日の時点では金額が分からないワケですから、経費に落とすことはできません。
納税通知書が届いている場合
亡くなった日において納税通知書が届いている場合には、
①「1年分の固定資産税について、納税義務が1月1日にとっくに生じていて、かつ、納税通知書でその金額がキチンと分かるため、その全額を必要経費に算入」
してもいいですし、固定資産税は通常、年4回の分割払(第1期~第4期)になっていて、各期ごとに納期限が設定されているのですが、
②「その納期限が到来している分のみが絶対に払わなくちゃいけない金額なので、納期限到来分のみを必要経費に算入」
してもいいですし、
③「実際に納付した分を必要経費(納期が到来していなくても前倒しで払っている場合には、払っているんだから経費)に算入」
してもいいことになっています。
想う相続税理士