相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告における配偶者の各種特例適用について、お話します。
相続税には様々な特例や非課税枠がある
財産的な価値が高いからと言って、高額な相続税を課税してしまうと、相続人が今後の生活に困ってしまう場合があります。
例えば、立地条件が良かったりして、ご自宅の敷地の評価額が高いような場合、その評価額に応じて高い相続税がそのまま課税されると、相続税の納税のために、ご自宅を売却しなければならなくなることも考えられます。
亡くなった方が生命保険に入ってくれていたとしても、その死亡保険金にそのまま相続税が課税されると、その一部が相続税の支払いに消え、実質的に受け取れる金額が減ってしまいます。
そこで、相続税の申告においては、相続税の負担を和らげる、各種の特例や非課税枠が設けられています。
想う相続税理士秘書
- 配偶者の税額軽減・・・配偶者が取得した財産については、最低でも1億6,000万円までは相続税が無税
- 小規模宅地等の特例・・・ご遺族の生活の基盤となる宅地等については、一定の面積まで、最大で80%の評価減を認める
- 死亡保険金・死亡退職金の非課税枠・・・それぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を適用することができる
配偶者の税額軽減は節税効果が高い。だから・・・
上記のうち、①の配偶者の税額軽減が、最も相続税を安くする効果があります。
配偶者が取得した財産なら、1億6,000万円までは無条件で相続税が無税となります。
ということは、配偶者は、②の小規模宅地等の特例や、③の死亡保険金・死亡退職金の非課税枠を適用しなくても、相続税がかからない(かかりにくい)のです。
もっと言えば、②の小規模宅地等の特例は、配偶者が適用しない方がいいのです。
適用できる面積に限度があるため、配偶者が特例の適用を受けることにより、その他の相続人が適用できなくなってしまう場合があるからです。
配偶者が取得した宅地等について特例の適用を受けないことにより、配偶者の相続税が高く計算されても、「1億6,000万円枠」で無税になるのであれば、痛くもかゆくもないのです。
であれば、配偶者以外の方が取得した宅地等に適用して、その取得者の相続税が着実に安くなる方が、全体の相続税も安くなりますし、いいですよね。
死亡保険金・死亡退職金の非課税枠は強制按分。だから・・・
上記のお話と同様に、③の死亡保険金・死亡退職金の非課税枠についても、配偶者が適用しない方がいいのですが、この死亡保険金・死亡退職金の非課税枠は、取得した死亡保険金等の金額に応じて按分して適用されます。
ですから、配偶者に適用せずに子供に適用する、というようなことができないのです。
例えば、死亡保険金の金額が、妻:3,000万円・子:1,000万円の場合、法定相続人もこの2人だとすると、非課税枠は500万円×2人=1,000万円となります。
この非課税枠1,000万円を全額、子の受け取った死亡保険金1,000万円に適用できれば、子が受け取った死亡保険金には相続税がかからず、妻が受け取った死亡保険金3,000万円には相続税が丸々課税されるけれども「1億6,000万円枠」に吸収されて無税、というシナリオが描けるのですが、残念ながらこの場合、妻・子の死亡保険金に適用できる非課税枠は、
子:1,000万円×1,000万円/4,000万円(死亡保険金総額)=250万円
という按分適用になり、子の死亡保険金については、250万円しか非課税枠が適用できないのです。
ということはどういうことになるかというと、死亡保険金の受取人は配偶者以外の相続人の方にした方がいいのです。
お一人になる配偶者にお金を相続させたいのであれば、預貯金などの方がいいのです(非課税枠は適用できなくても「1億6,000万円枠」で無税になるため)。
想う相続税理士