相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税申告における「点」と「線」について、お話します。
相続税は死亡日時「点」の財産に課税される
「相続税のあらまし」には、次のように書かれています(国税庁HP、一部抜粋加工)。
3 相続税が課される財産
(1)被相続人が亡くなった時点において所有していた財産
(2)みなし相続財産
(3)被相続人から取得した相続時精算課税適用財産
(4)被相続人から相続開始前3年以内に取得した暦年課税適用財産
相続税の計算は(1)がベースとなります。
想う相続税理士
この(1)の文言をそのまま単純に解釈すると、「亡くなった時点」で所有していた財産が相続税の課税対象になるワケですから、亡くなった日時点にあった財産を集計して、相続税の申告をすればいい、ということになります。
亡くなる前の財産の動きは関係ない、ということになります。
しかし、税務署は亡くなる前の財産の動きをチェックします。
贈与税をちゃんと払っている?贈与は成立している?
「贈与は相続税対策の王道」と言われます。
相続税が「亡くなった時点」の財産に課税されるのであれば、その財産を減らせば相続税も安くなるワケですから、前もって親族に贈与すれば、相続税は安くなります。
想う相続税理士秘書
税務署は、財産がある方が生前に贈与をすること(しようとすること)を知っています。
この「贈与」がきちんと成立していれば、また、「贈与税の納税」がきちんと行われていれば、税務署は何も言いませんが、そうでない場合には、相続税の税務調査で指摘される可能性が高くなります。
贈与は、相手がある話ですから、税務署が贈与について調べようとすれば、当然、亡くなった方だけでなく、財産をもらう側である親族についても調べます。
所有財産と収入(臨時的な財産の取得を含む)の整合性をチェックされる
収入があれば、財産も多くなるハズです(浪費しなければ)。
収入がなければ、財産は少ないハズです(相続や贈与でもらえば財産は多くなります)。
「財産の多寡(多少)」と「収入(相続や贈与による財産の取得を含む)」は通常「比例」します。
税務署は、この収入側を前もって把握しています。
過去の確定申告などの内容から、亡くなった方やその親族の方に、どのような収入があるか、もっと言えば、土地の売却などにより、多額の収入があったかどうか、また、今回の相続以外の相続に係る相続税申告や贈与税申告から、相続や贈与による財産の取得があったかどうかの情報を蓄積しています。
相続の際には、それを時系列でチェックします。
つまり、「点」ではなく「線」で見ます。
過去、収入が増えているのか、減っているのか、臨時的な収入(や財産の取得)がいつあったのか、そのような流れを把握して、相続税の申告が適正かどうかをチェックするのです。
想う相続税理士