相続税専門税理士の富山です。
今回は、税務上の贈与の考え方について、お話します。
書面が無い贈与は取り消すことができる贈与!
贈与は書面が無くても本当に大丈夫なのか?上記の記事でもお話したように、贈与は諾成契約であり、当事者の合意の意思表示のみにより成立するが、贈与契約書がない贈与は、実は取扱いが曖昧
なぜなら、「契約が成立している」ということになっているのに、取り消せるから
民法(一部抜粋加工)
(書面によらない贈与の解除)
第五百五十条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
何をもって贈与成立と考える?
「贈与契約書がなくても、履行が終われば、つまり、財産の移転があれば、それこそ贈与成立になるんだから、問題ないんじゃない?」と思われるかもしれないが、本当にそうか?
財産が移転したということをどのように捉えるか、という問題が出てくる
よくある失敗は名義預金
親が子供の名前の預貯金口座を作り、そこにお金を移転する
親の口座から子名義の口座にお金が移転しているから、これは財産が移転していることになるのか
税務署は必ずしもそうは考えない
親が子供の名前を借りてお金を積んでいる、と判断する場合がある
贈与者から受贈者に財産が(贈与で)移転するということは、どういう変化が生じるのか、生じていないとおかしいのかを考える
親はもうそのお金を使えない、親が使えるのであれば、あげた(贈与した)ことにはならない
逆に、子がそのお金を自由に使える状態になければ、もらったことにはならない
もらったのであれば、子はその財産を支配(管理運用)しているハズ
預貯金であれば、通帳・証書・届出印などを子が持っていないと支配できない
一般的に見れば、子供の名前の預貯金口座にお金が移動していれば、贈与があったと思うかもしれないが、親がその預貯金口座を支配している場合、親は気が変わればその預貯金口座を解約することができる、解約して自分名義の預貯金口座にお金を戻すことができる
それでも贈与が成立したと言えるだろうか
民法上の贈与は成立しても税務上の贈与は成立しない場合がある!
相続税法基本通達(一部抜粋加工)
1の3・1の4共-8 財産取得の時期の原則
相続若しくは遺贈又は贈与による財産取得の時期は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次によるものとする。
(1)相続又は遺贈の場合 相続の開始の時(失踪の宣告を相続開始原因とする相続については、民法第31条《失踪の宣告の効力》に規定する期間満了の時又は危難の去りたる時)
(2)贈与の場合 書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時
上記にあるとおり、書面によらない贈与は、財産が移転した時、もっというと、受贈者が財産を支配した時に、贈与があったモノとして、贈与税が課税される
つまり、民法上の「書面に寄らない贈与」が成立していても、受贈者の財産の支配が完了しなければ、税務上は贈与税を課税しない、つまり、贈与があったとは考えない、ということ
贈与者(親)が亡くなる前に、受贈者(子)に財産の支配権が実質的に移転していない場合には、贈与がなかったことになる、つまり、その財産の支配権は贈与者(親)にあることになり、その財産は相続財産として相続税の課税対象になる
想う相続税理士
受贈者に財産の支配権が移転しなければ、税務上の贈与は成立しませんので、ご注意を。