相続税専門税理士の富山です。
今回は、養子縁組をした年の贈与に係る相続時精算課税制度の適用範囲について、お話します。
相続時精算課税制度は養子でも可
相続税法には税務署長が養子の数を否認できる規定がある!国税庁HPタックスアンサー
No.4103 相続時精算課税の選択(一部抜粋)
相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。
また、この制度の贈与者である父母または祖父母などが亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。
上記の記事でもお話したとおり、養子は実子と同じ身分を有するため、相続時精算課税制度を選択すれば、養父母から受けた贈与について、相続時精算課税を適用することができます。
養子縁組前の贈与は相続時精算課税制度は適用不可
Aさんが令和5年6月にBさんと養子縁組をした(Bさんの養子になった)のですが、Bさんから令和5年3月に1,000万円、令和5年9月に1,500万円の贈与を受けているとします。
1,000万円は養子縁組前、1,500万円は養子縁組後ということになります。
相続時精算課税制度の適用を受けるためには、相続時精算課税選択届出書を提出しなければならないのですが、この届出書の冒頭には、
「私は、下記の特定贈与者から令和_年中に贈与を受けた財産については、相続税法第21条の9第1項の規定の適用を受けることとしましたので、下記の書類を添えて届け出ます。」
と書かれています。
そうすると、Aさんは「令和_年中」のところに5と書くことになり、(令和5年中の贈与ですから)1,000万円と1,500万円の合計2,500万円の贈与について、相続時精算課税制度を適用することができるのでしょうか?
この場合、相続時精算課税制度が適用できるのは、養子縁組後の1,500万円の贈与のみです。
1,000万円の贈与を受けた時には、養子(子・推定相続人)ではなかったからです。
想う相続税理士