相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税申告における保証債務と連帯債務の取扱いについて、お話します。
亡くなった方に債務があると相続税が安くなる場合がある
亡くなった方が債務者となっている債務がある場合、その債務はその相続人の方が代わりに負担することになるため、相続したプラスの財産からマイナスして相続税の課税対象を計算することができます。
これを「債務控除」と言います。
相続税法(一部抜粋加工)
第13条 債務控除
相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第1条の3第1項第1号又は第2号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用
「相続開始の際現に存するもの」とあるように、確実と認められるものしか控除することはできません。
では、次のようなちょっと特殊な債務は、相続税の申告において債務控除の対象になるのでしょうか?
保証債務
民法(一部抜粋)
(保証人の責任等)
第四百四十六条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
上記にあるとおり、債務者が債務の履行をしない場合に、保証人が代わりに履行しなければならない債務のことを「保証債務」と言います。
結論から言うと、この保証債務は控除できません。
代わりに返済しなければならないことが確実ではないからです。
保証債務でも、代わりに返済することが確実な場合には、控除することができるため、下記の全ての要件に該当するときは、その主たる債務者の弁済不能の部分の金額につき債務控除をすることができます。
- 主たる債務者が弁済不能の状態にある
- 保証債務者がその債務を履行しなければならない
- 主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない
連帯債務
民法(一部抜粋)
(連帯債務者に対する履行の請求)
第四百三十六条 債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
上記にあるとおり、複数の方がひとつの債務に対して全額の債務を負い、他の方が返済した場合にはその債務の返済を免れることができる債務を「連帯債務」と言います。
結論から言うと、連帯債務については債務控除ができる場合とできない場合があります。
債務控除の適用可否の判断ポイントは、「債務を負担することが確実と認められる」かどうかです。
ですから、連帯債務でも、負担すべき債務の金額が明らかである場合には、その金額については控除することができます。
また、下記の全ての要件に該当する場合で、連帯債務を負担しなければならないと認められる部分の金額も、債務控除が可能です。
- 連帯債務者のうちに弁済不能の状態にある方がいる
- その方に求償しても弁済を受ける見込みがない
- その方の負担部分も負担しなければならないと認められる
想う相続税理士