相続税専門税理士の富山です。
今回は、タダで賃貸されていた宅地を相続した場合の注意点について、お話します。
貸している土地建物は安く評価できる
ご自分の土地の上にアパートを建てて貸している場合、そのアパートの建物及びその敷地は、入居者がいるため、たとえ持ち主(オーナー)だとしても、自由に使ったり、処分したりすることができません。
そのような利用制限等がある分、アパートの土地・建物については、相続税の計算において、自由に使える土地・建物(「自用地」「自用家屋」と言います)よりも評価額が安くなります。
そのアパートのオーナーさんが亡くなった場合、建物については「貸家」、敷地については「貸家建付地」として評価します。
借地権割合が40%の地域にある場合、通常の自用家屋・自用地ベースの評価額がそれぞれ1,000万円だとすると、
貸家:1,000万円×(100%△30%)=700万円
貸家建付地:1,000万円×(100%△40%×30%)=880万円
で評価します。
タダで借りていると権利を主張できなくなる
タダで貸すことを「使用貸借」と言います。
民法(一部抜粋加工)
(使用貸借)
第五百九十三条 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
使用貸借の場合、借地借家法が適用されません。
お金を払っていない(タダで借りている)のですから、立場や権利が極端に弱くなります。
「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(一部抜粋加工)
(使用貸借による土地の借受けがあった場合)
1 建物又は構築物の所有を目的として使用貸借による土地の借受けがあった場合においては、当該土地の使用貸借に係る使用権の価額は、零として取り扱う。
評価上は「使用権がゼロ(つまり借地権がゼロ)」ですから、土地をタダで貸している場合、その敷地については「自用地」として評価することになります。
アパートの建物を子供に贈与した場合
親がアパートの建物及びその敷地(土地)を所有していて、建物だけを子供に贈与したとします。
贈与後は、建物と土地の所有者が変わります。
子供は親から土地を借りていることになります。
親子間なので、建物をもらった子供は、親に地代を払わない、つまり、タダで借りているとします。
これは「使用貸借」ですので、この状態で親が亡くなった場合、その敷地は「自用地」として評価するのかというと、実は「貸家建付地」として評価します。
タダで土地を借りている子供の権利は無いに等しい(税務上はゼロ)ですが、入居者の土地に対する権利は依然としてあるのです。
親が子供に勝手に建物を贈与しようが、入居者としての権利は消えないのです。
つまり、その権利の影響を受ける分、通常のアパートの敷地と同様、その敷地(土地)の評価は下がるのです。
想う相続税理士