相続税専門税理士の富山です。
今回は、遺産分割協議書への債務の記載について、お話します。
債務の負担者を決めても金融機関には通用しない?
相続があった場合、遺言がなければ、相続人が遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するかを決めます。
亡くなった方に債務があった場合には、その債務についても、誰が負担するのかを決めるのが通例です。
しかし、この債務の負担者の決定は、相続人の中で勝手に決めたものであり、債権者(銀行など)がOKしたワケではありません。
つまり、相続人が長男Aと次男Bだった場合、「銀行からの借入金は長男Aが負担する」という遺産分割協議書を作成すれば、次男Bが完全にその債務の履行から逃れられるかというと、そんなことはありません。
それぞれの相続人が自分の「法定相続分の分だけ返済義務を負う」ことになります。
税務署は金融機関ではないから言うことが変わる?
相続税の申告においては、土地や預貯金などのプラスの財産から、借入金などの債務の金額をマイナスして相続税を計算します(「債務控除」と言います)。
この場合、マイナスするのは法定相続分の分だけではありません。
相続人間の話し合いで自分が「負担する」と決まったのであれば、その決まった分は自分のプラスの財産からマイナスできます(全部なら全部でもOK)。
相続税法(一部抜粋加工)
第13条 債務控除
相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうち「その者の負担に属する部分の金額」を控除した金額による。
「負担に属する部分の金額」とは?
この「その者の負担に属する部分の金額」については、通達に次のような記載があります。
相続税法基本通達(一部抜粋加工)
13-3 「その者の負担に属する部分の金額」の意義
法第13条第1項に規定する「その者の負担に属する部分の金額」とは、相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。)によって財産を取得した者が「実際に負担する金額をいう」のであるが、この場合において、これらの者の「実際に負担する金額が確定していないとき」は民法第900条から第902条までの規定による相続分又は包括遺贈の割合に応じて負担する金額をいうものとして取り扱う。
つまり、「相続人間で債務の負担者を決めたって、銀行には通用しないんだから、遺産分割協議書に債務の負担者を記載したってムダ」なんてことはなく、負担方法について実際に決まったのであれば、相続税の申告は、その内容で債務控除をしてOKということなのです(遺産分割協議書が、その決まったことの証明になります)。
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