相続税専門税理士の富山です。
今回は、小規模宅地等の特例の「貸付事業用宅地等」の適用要件について、お話します。
小規模宅地等の特例は超メジャーな相続税の減税特例
相続税の申告においては、一定の「居住用」または「事業用」の土地について、最大で330㎡または400㎡まで8割引きで申告することができる「小規模宅地等の特例」という減税特例があります。
残された遺族の生活基盤となるような土地については、課税を軽減してあげよう、という趣旨によるものです。
亡くなった方の「居住用」の土地、つまり、ご自宅の敷地についても、この特例の対象となります。
この場合、配偶者の方がご自宅の敷地を相続すれば、それだけで要件を満たしますので、そのご自宅の敷地の評価額(相続税評価額)のうち、330㎡までに対応する部分の金額については、8割減額できることにより、残りの2割部分にしか相続税が課税されない、ということになります。
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貸している土地も小規模宅地等の特例の対象になり得る
小規模宅地等の特例の適用パターンの中に、「貸付事業用宅地等」というモノがあり、次のように規定されています。
租税特別措置法(一部抜粋加工)
第69条の4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
貸付事業用宅地等 被相続人等の事業(不動産貸付業その他政令で定めるものに限る。以下この号において「貸付事業」という。)の用に供されていた宅地等で、一定のものをいう。
その土地を「貸していて」土地の賃借人が建物や構築物を建てたりしている場合や、その土地に貸家など建物や構築物を建てたりして、それを「貸している」場合には、上記の不動産貸付業に該当します。
ただし、この場合の賃貸が、無償(タダ貸し)だったり、固定資産税相当額しか賃料をもらっていない場合には、ここで言う「貸している」には該当しません。
ザックリ言うと、相続税の申告上は、タダで貸しているのは、貸していない(貸付事業をしていない)のと同じと考えるのです。
では、父所有の土地の上に、長男が貸家を建てて不動産賃貸業を営んでいる場合、父と長男の間で地代のやり取りがなかった(タダ貸しだった)ら、小規模宅地等の特例は適用できないのでしょうか?
生計一親族が貸付事業をしている場合も対象
この場合、長男が父の生計一親族に該当すれば、貸付事業用宅地等として、小規模宅地等の特例の適用の可能性があります。
「タダで貸しているんだから貸付事業じゃないんじゃない?」と思われるかもしれませんが、このパターンは、「長男の貸付事業」用の宅地として、適用の可能性があるのです。
上記の租税特別措置法上の「貸付事業用宅地等」の「被相続人等の事業」の「被相続人等」は、「亡くなった方+亡くなった方の生計一親族」という意味です。
ですから、父が長男にタダで貸すことにより、父にとっては貸付事業用の宅地に該当しなくても、生計一親族である長男が有償で不動産賃貸業を行っていれば、貸付事業用宅地等に該当し得るのです。
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