相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続財産の中に宅地造成の工事中である土地がある場合の、その土地の評価方法について、お話します。
国税庁の質疑応答事例にはこう書いてあります
国税庁HP(一部抜粋加工)
造成中の宅地の評価
【照会要旨】
課税時期において、評価する土地が宅地造成工事中である場合には、どのように評価するのでしょうか。
【回答要旨】
造成中の宅地の価額は、①その土地の造成工事着手直前の地目により評価した課税時期における価額と②その宅地の造成に要した費用現価の80%相当額との合計額によって評価します。
この場合の費用現価とは、課税時期までに投下した造成費用(例えば、埋立て費、土盛り費、土止め費、地ならし費等)の額を課税時期の価額に引き直した額の合計額をいいます。
上記の文章のポイントとなる部分は、
①その土地の造成工事着手直前の地目により評価した課税時期における価額
と
②その宅地の造成に要した費用現価
です。
全体としては、「①+(②×80%)」で計算することになります。
①の「造成工事着手直前」の評価額を計算する際には仮の造成費用を使う!
宅地造成中の土地ということは、従前の土地は宅地ではない、ということです。
①は、その「宅地ではない従前の土地」の評価部分になるのですが、路線価方式、または、倍率方式における宅地比準方式により評価する場合には、いったん宅地ベースの評価をして、そこから宅地造成費を控除して「宅地ではない従前の土地」の評価額を算出します。
これは、宅地造成中の土地に限らず、通常の路線価方式で畑などを評価する場合も同様です。
路線価10万円の100㎡の土地があるとします。
宅地ベースなら、10万円×100㎡=1,000万円です。
でも、その土地が畑で、宅地にするためには、整地費や土盛費が200万円かかるとします。
その場合には、1,000万円△200万円=800万円が「宅地ではない従前の土地(畑)」の評価額になります(畑だからデコボコしている、よって、真っ平らでキンピカな宅地よりも200万円安い、という考え方です)。
逆から考えると、800万円の畑に200万円の宅地造成費用をかけると、1,000万円のキンピカの宅地になる、ということです。
この場合の「200万円」は、実際にかかる費用ではありません。
国税庁HPの財産評価基準書に、この金額で計算すること、という金額についての指示があります。
ちなみに、令和4年分の栃木県の場合には、
○伐採・抜根費:1㎡当たり1,000円
○地盤改良費:1㎡当たり1,600円
○土盛費:1㎥当たり7,300円
○土止費:1㎡当たり76,000円
相続があった時点で「宅地ではない従前の土地」は、実際に造成するワケではありませんので、宅地造成費用は現実に発生していません。
それを納税者が個別に工事業者等に見積りを出してもらうことも方法としては考えられますが、それだとバラツキが出て、課税の公平が図れませんよね(ショセン見積りですから)。
そこで、この計算で使う宅地造成費については、税務署が金額を定めているのです。
②の「造成に要した費用現価」は実際の数字ベース!
「宅地ではない従前の土地」を評価するのであれば、先ほどまでの部分で話は終わりです。
しかし、今回のテーマは、「宅地造成中の土地」の評価です。
上記で言えば800万円の土地に、実際に宅地造成費用を投入している段階で相続が発生した土地を評価するのです。
宅地造成の工事を実際にしていますので、この場合には、その相続開始時点までに投入された実際の工事費用を計算に加味します。
この場合の「工事費用」については、「支出した金額」という説明をしているサイトも見かけますが、実際にお金を払っているかどうかは関係ないモノと思われます。
例えば、全体で500万円かかる造成工事が、相続開始時点では進捗率が95%でギリギリ完成していない、支払は着手金の100万円のみ、という場合、「支出した金額」で計算すると、100万円×80%=80万円しか加算しないことになってしまいます。
でも、土地自体には、ほぼ500万円分の造成が完了しています。
「課税時期までに投下した造成費用」ですから、土地に投下された分の効用(造成による宅地化部分)は加味(80%しか加味しないのは、評価の安全性を考慮)する必要があるモノと思われます。
造成工事は途中の段階なので、相続開始時点で工事費用がいくらかかっているのか、というのは直接には分かりません(造成工事の契約書の金額は、完成した時点での総額の金額です)。
ですから、その契約書等の金額をベースに、工事の進捗状況等を勘案し、工事費用を計算で出すしかありません。
また、留意しなければならないのは、質疑応答事例の後段の最後の部分です。
「課税時期の価額に引き直した額」となっています。
ザックリ言うと、「物価変動分を考慮しろ」ということですから、特に工事が長期化している場合には、注意が必要です。
想う相続税理士