生前贈与の税制はどう変わるのか 現行制度の問題点と予想される改正内容 https://t.co/6HXmmdLgcF
— 想う相続税理士 秘書 (@japantaxprosec) July 7, 2022
贈与税は相続税の補完税
「贈与税は相続税の補完税」と言われています。
亡くなる前に贈与をすれば、その贈与をした分だけ相続時点の財産(相続財産)が減少します。
結果として、相続税が減少します。
そこで、この贈与財産に贈与税をかけることにより、相続税の減収分を補うのです。
また、相続で財産を取得した方が、その相続開始前3年以内に、その亡くなった方から贈与により財産を取得している場合、その財産を取得した方については、相続で取得した財産の金額に、その贈与により取得した財産の金額を加算した金額を、相続税の課税対象として相続税を計算します。
その3年以内贈与財産に対して、その贈与時に既に贈与税が課税されている場合には、1つの財産に贈与税と相続税が二重に課税させることになってしまうため、相続税を計算する際には、その既に課税された贈与税の分を控除(贈与税額控除)して計算します。
3年を超えたら補完されない!
生前贈与のうち、相続税の課税対象となるのは、直近3年以内分だけです。
ということは、3年を超えた分については、贈与税の課税だけです。
贈与税が課税されれば相続税を補完することになるでしょうが、非課税贈与の場合、贈与税はゼロです(補完効果なし)。
また、非課税贈与ではなくても、相続税の税率より低い税率の贈与税で贈与が行われた場合、相続税を補完したことになるのでしょうか?
相続税と贈与税の一体化で損する?トクする?
記事の中に、富裕層ほど相続税対策のために生前贈与を行うため、富裕層の子供世代(またはその子供である孫世代)が生前贈与を受けられることのメリットを享受することにより、格差がさらに拡大する、という指摘がありますが、生前贈与をしても節税効果が得られないようにしよう、ということで、過去の税制改正において、「相続税と贈与税の一体化」について言及されています。
実は、現時点の税制においても、相続税と贈与税を一体化する制度があります。
相続時精算課税制度です。
文字通り、最終的に「相続時」の相続税「課税」に一本化し、その際、既に払った贈与税は完全に「精算」します。
相続時精算課税制度適用後の贈与財産は、贈与の時期が3年以内かどうかにかかわらず、相続税の課税対象に加算されます。
これは、財産の少ない方には関係ない、と思われるかもしれませんが、例えば、相続人となる方が長男1人で、3,500万円の財産をお持ちの方がいらっしゃるとします。
この方が、相続時精算課税制度を適用して、全財産を長男に贈与したとします。
その場合、贈与税が
(3,500万円△2,500万円)×20%=200万円
かかります。
相続の際には、丸々相続税の課税対象に加算されるため、相続税の課税対象は、
ゼロ円(全財産を贈与したので、相続時の相続財産はゼロ)+3,500万円=3,500万円
となります。
相続人が1人の場合の相続税の非課税枠は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」ですので、
3,000万円+600万円×1人=3,600万円
です。
3,500万円はこの非課税枠に収まっているため、相続税は非課税です。
したがって、ゼロ円の相続税に対して、200万円の贈与税が精算されるため、200万円の贈与税が丸々返ってきます(還付されます)。
一体化されると、財産の少ない方でも、早期に子供や孫の世代に財産を移転しやすくなるため、一体化のメリットを享受できます。
財産の多い方は、贈与による節税メリットがなくなります。
結果として、格差是正につながります。
想う相続税理士