相続税専門税理士の富山です。
今回は、遺留分侵害額の請求と、相続税の申告における小規模宅地等の特例との関係について、お話します。
遺留分侵害額の請求をされてもお金がなかったら?
遺言があれば、必ずその遺言どおりに相続財産が分けられるとは限りません。
相続人には、「遺留分」という最低限の財産の取り分が保障されています。
取得した相続財産がこの遺留分に満たない相続人の方は、財産を多く相続した相続人に対して、遺留分侵害額の請求をすることができます。
「侵害『額』」の言葉どおり、お金で解決することが基本です。
しかし、お金がなければ、相続した財産を渡すしかありません。
小規模宅地等の特例の適用を受けられるのは誰?
次女Bが長女Aに対して、遺留分侵害額の請求をしました。
長女Aはお金がなかったので、お金の代わりに相続したイ土地を次女に渡しました。
次女Bは相続に関して財産を取得したので、税務署に申告書を提出し、相続税を納めなければなりません。
イ土地は、小規模宅地等の特例の適用対象となる土地です。
この場合、次女Bはイ土地につき、小規模宅地等の特例を適用できるのでしょうか?
上記の答えは「NO」です。
長女Aは、次女Bからの遺留分侵害額の請求により「金銭債務」を負うことになりましたが、その支払に充てるための金銭が手元になかったため、「モノで払った」(代物弁済した)ため、次女Bがイ土地を最終的に取得することになりました。
次女Bは相続でイ土地を取得したワケではなく、いわば借金の肩代わりでイ土地を取得しました。
ですから、次女Bにとってイ土地は相続財産ではありませんので、小規模宅地等の特例を適用して申告することはできません。
次女Bは、あくまでも「遺留分侵害『額』」(金銭)を取得したものとして、相続税の申告をすることになります。
相続で土地を取得したのは誰?
この場合、イ土地を相続で取得したのは誰かというと、遺言で取得した長女Aです。
イ土地は、小規模宅地等の特例の適用対象となる土地ですから、長女Aは、イ土地について小規模宅地等の特例を適用して、相続税の申告をすることができます。
ただし、遺留分侵害額の請求により、イ土地を申告期限前に次女Bに渡した場合には、所有継続要件(申告期限まで継続所有)を満たさないため、小規模宅地等の特例を適用することはできません。
想う相続税理士