相続税専門税理士の富山です。
今回は、養子の人数が相続に与える影響について、お話します。
養子の人数を増やせば相続税が安くなる?
養子縁組をすると、その養子の方は実子と同じ扱いになります。
民法
第三款 縁組の効力
(嫡出子の身分の取得)
第八百九条 養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
「子」になるということは、法定相続人になることを意味します。
相続税の計算では、
死亡保険金の非課税枠(非課税限度額):500万円×法定相続人の数
死亡退職金の非課税枠(非課税限度額):500万円×法定相続人の数
これらの非課税枠は、法定相続人の数を基に計算するため、養子縁組をすると、非課税枠が増加します。
法定相続人としてカウントできる養子の人数には制限がある
上記の取扱いだけだと、養子の人数を増やして、財産の金額と同じになるまで非課税枠を増やせば、相続税がかからない、ということになってしまうため、上記の非課税枠の算式でカウントできる養子の人数には制限があります。
相続税法
第15条 遺産に係る基礎控除(一部抜粋)
一 当該被相続人に実子がある場合又は当該被相続人に実子がなく、養子の数が1人である場合 1人
二 当該被相続人に実子がなく、養子の数が2人以上である場合 2人
実子の方がいなければ2人、そして、実子の方がいる場合には1人までしかカウントできません。
ということは、養子の人数をこの制限以上に増やしても、相続には影響が出ないのでしょうか?
民法上は養子の制限がないため法定相続分に影響する!
夫Aさん・妻Bさんのご夫婦がいて、そのお二人の間には、長男Cさん・次男Dさんがいるとします。
夫Aさんが死亡した場合、各相続人の法定相続分は、
妻Bさん1/2・長男Cさん1/4・次男Dさん1/4
です。
もし、長男Cさんの子供(Aさんから見た孫)Eさんが夫Aさんの養子になっていた場合、各相続人の法定相続分は、
妻Bさん1/2・長男Cさん1/6・次男Dさん1/6・孫Eさん1/6
となります。
さらに、長男Cさんの子供(Aさんから見た孫)Fさんも夫Aさんの養子になっていた場合、各相続人の法定相続分は、
妻Bさん1/2・長男Cさん1/8・次男Dさん1/8・孫Eさん1/8・孫Fさん1/8
となります。
さらにさらに、長男Cさんの嫁Gさんも夫Aさんの養子になっていた場合、各相続人の法定相続分は、
妻Bさん1/2・長男Cさん1/10・次男Dさん1/10・孫Eさん1/10・孫Fさん1/10・嫁Gさん1/10
となります。
民法には、相続税の計算のような養子の人数の制限はありません。
この場合、長男Cさん一家と次男Dさん一家のそれぞれの合計の法定相続分は、
長男Cさん一家:長男Cさん1/10+孫Eさん1/10+孫Fさん1/10+嫁Gさん1/10=4/10
次男Dさん一家:次男Dさん1/10=1/10
となり、従来に比べ、次男Dさんの遺産相続の取り分がかなり減少します。
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