相続税専門税理士の富山です。
今回は、物納が認められるための要件について、お話します。
お金がなくて相続税が納められないことが物納の要件
相続税は、現金一括納付が原則です。
また、一括で納付できない場合には、延納により分割して納付することも認められます。
そして、延納でも納付できないという場合には、物納が認められる、という流れになります。
物納を申請する場合には、「金銭納付を困難とする理由書」というものを提出する必要があります。
相続により取得した現金や預貯金など、また、その物納をしようとする方が元々所有していた財産、そして、今後の収入や生活費などから、「相続税の納税に充てられるお金なんてない!」(金銭納付が困難だ)ということを、計算上明らかにするための書類です。
他の相続人がキャッシュリッチでも関係ない
物納が認められるかどうかの基準となる「金銭納付が困難であるかどうか」の判断は、その財産の取得者ごとに行います。
ということは、元々現金や預貯金などをお持ちでなく、収入もあまり多くない方が物納を申請し、その方が、遺産分割協議においても、現金や預貯金などを相続しない、ということであれば、物納が認められやすくなる、ということです。
つまり、他の相続人の方が、現金や預貯金などをたくさん相続していたり、元々現金や預貯金などを所有している方だったり、収入が高かったりすることは、物納申請とは関係ない、ということです。
遺産分けの仕方によって、物納が認められたり認められなかったりする可能性がある、ということになります。
小規模宅地等の特例の適用に注意
物納は、現金で納付する代わりに、モノで納付する、ということになるのですが、そのモノで納付することとなる相続税の金額は、原則として、その物納財産の相続税の申告における評価額になります。
例えば、相続税の申告において1,000万円の評価額で申告をした土地があり、その土地を物納する場合には、1,000万円分の相続税をモノで納める、ということになります。
居住用または事業用の宅地で、一定の要件を満たす場合には、「小規模宅地の特例」の適用を受けることができます。
例えば、亡くなった方のご自宅の敷地については、一定の要件を満たせば、330㎡まで8割引で評価することができます。
1,000万円の土地であれば、200万円の評価額で相続税を計算することができる場合があるのです。
この小規模宅地等の特例の適用を受けた財産を物納する場合には、その特例適用後の金額で相続税を納めたこととなります。
つまり、元々1,000万円の評価額だったのに、小規模宅地の特例を適用したことにより200万円の評価額になっていたとしたら、その土地を物納しても、200万円しか相続税が減らない、ということです。
まったく同じ土地を物納するのに、小規模宅地の特例の適用を受けなかった場合には、1,000万円の相続税を納めたことになるのに対し、適用を受けた場合には、200万円の相続税を納めたことにしかならないのです。
物納を申請する場合には、小規模宅地等の特例の選択(どの土地に適用するか)にも、ご注意を。
想う相続税理士
物納しようとする財産が「物納適格財産」に該当するかどうかも、キチンとご確認を。