相続税専門税理士の富山です。
今回は、配偶者居住権の評価方法について、お話します。
自宅を所有せず自宅に住める
配偶者居住権は、配偶者が以前から住んでいた建物を、タダで使用したり、第三者に貸すことができる権利(第三者に貸す場合には、所有者の承諾が必要)
配偶者が自宅を丸ごと相続すると、相続する金額(割合)が大きくなり、他の相続人との関係上、他の財産を相続できなくなってしまう場合に、自宅は所有しなくても住めればいいから住む権利だけ相続したい、という希望を叶えることができる
この配偶者居住権も相続税の課税の対象
自宅建物を「配偶者居住権」と「所有権」、自宅敷地を「敷地利用権」と「所有権」に区分する
理論上、「配偶者居住権」「敷地利用権」は、相続により発生し、配偶者が亡くなると終了する(原則は終身、有期も可)、しかし、配偶者がいつなくなるかは分からないため、平均余命によって計算する
配偶者居住権(建物)の計算方法
「自宅建物=配偶者居住権+所有権」だから「配偶者居住権=自宅建物△所有権」
まず、配偶者居住権終了時の自宅建物の金額を求める
(前提)
相続時点のその建物の金額は1,000万円
相続後、その建物は10年持つ
相続後、配偶者居住権が6年で終了する
上記の場合、その建物は10年経過すると0円になる、1年当たり100万円ずつ減っていく、だから、配偶者居住権が終了する6年後は(600万円減るから)400万円になる
6年後は配偶者居住権が終了しているので、この400万円は丸々「所有権」
相続で所有権を取得する方は、6年後に400万円の建物を手に入れることができる、6年後に400万円を取得する権利は、相続時点ではいくらになるか?
相続時点に400万円あると、利息が付いたりして、6年後には400万円よりも金額が大きくなってしまう、だから、6年後の400万円の価値は、相続時点では400万円よりは理論上は少ないハズ
そこで、配偶者居住権終了時の建物の金額(400万円)を、相続時の現在価値に割り戻し計算する(ザックリ言うと、利息が付く分、少なく計算する、例えば390万円)
ということは、「配偶者居住権=自宅建物△所有権」だから、「配偶者居住権=1,000万円△390万円=610万円」で相続税の申告をする(所有権は390万円)
建物の金額は、相続税評価額(=固定資産税評価額×1.0)がベース
割り戻し計算は、残存年数に応じた法定利率による複利現価率を採用
何年持つかは、建物の構造等により定められている法定耐用年数の1.5倍で計算(法定耐用年数は事業用の建物の耐用年数、自宅建物は、事業用の建物ほど損耗が激しくないので、1.5倍持つものとして計算)
敷地利用権(土地)の計算方法
建物は「自宅建物=配偶者居住権+所有権」だが、土地も同じように「自宅土地=敷地利用権+所有権」(「敷地利用権=自宅土地△所有権」)になる
敷地利用権も同様で、所有権部分を割り戻し計算する
この場合、配偶者居住権終了時の土地の金額は、相続時点と変わらないものとする(相続時点の相続税評価額=配偶者居住権終了時の相続税評価額)
土地の相続時点の相続税評価額(路線価等ベース)が800万円の場合、配偶者居住権終了時の相続税評価額も800万円と考える、この800万円は丸々所有権、この所有権について、相続時の現在価値に割り戻し計算すると780万円になるとする
相続時点の土地の所有権が780万円
相続時点の土地の金額が800万円
敷地利用権は「敷地利用権=自宅土地△所有権」だから、「敷地利用権=800万円△780万円=20万円」
想う相続税理士