【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

養子縁組による相続税の軽減、人数制限があるモノとないモノがある!

相続税専門税理士の富山です。

今回は、養子縁組の相続税申告への影響について、お話します。


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養子縁組をすると相続税の非課税枠が大きくなる

相続税の計算においては、有名な「非課税枠」があります。

財産の金額がその非課税枠以下であれば、相続税はかからない、というモノです。

この非課税枠は、次のように計算されます。

遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

養子縁組をすることにより、その養子の方は、民法上は実子の方と同じ立場になります。

民法
第三款 縁組の効力
(嫡出子の身分の取得)
第八百九条 養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。

そうすると、上記の算式の「法定相続人」に該当します。

養子縁組することにより、法定相続人の数が増えるワケですから、遺産に係る基礎控除額も増えます。

つまり、相続税の軽減につながる、ということになります。

しかし、上記の算式の法定相続人にカウントする養子の方を無制限に認めてしまうと、養子の数さえ増やせば相続税はかからない、なんてことになってしまいますので、この法定相続人の数に算入できる養子の方の数については、下記のような制限があります。

  1. 亡くなった方に実の子供がいる場合・・・1人まで
  2. 亡くなった方に実の子供がいない場合・・・2人まで

養子の方の人数制限を受けるのは遺産に係る基礎控除額だけではない!

相続税の計算においては、実は「遺産に係る基礎控除額」以外にも「非課税枠」があります。

それは、生命保険金の非課税枠と、死亡退職金の非課税枠です。

どちらも
「500万円×法定相続人の数」
で計算されます。

この算式の法定相続人の数に含めることができる養子の方の人数についても、上記の「1人まで」「2人まで」という制限が同様にある、ということです。

また、この養子の方の人数制限は、「相続税の総額」を計算する場合にも影響します。

相続税は、財産を取得した方ごとに計算するのではなく、いったん全財産に対する相続税(「相続税の総額」と言います)を計算します。

その際、各相続人が各法定相続分で財産を取得したものとみなした(分けっこしたものとみなした)各金額に、その金額に応じた相続税の税率(金額が大きければ高い税率、小さければ低い税率)を掛けていきます。

相続人の方の人数が多ければ、分けっこする人数が多くなる、ということですから、法定相続分で取得したものとみなされる金額は相対的に小さくなります(人数が増えれば分け前が減ります)。

そうすると、掛けられる相続税の税率も低くなります。

つまり、相続税の軽減につながる、ということです。

この相続人の人数についても、養子の方については、上記の「1人まで」「2人まで」という制限があります。

養子縁組しても人数制限がないモノもある!

相続税の申告においては、未成年者控除・障害者控除というものがあります。

これは、財産を取得する方が未成年者や障害者である場合には、その年齢に応じた「未成年者控除」「障害者控除」が適用できる、というモノです。

また、その方の未成年者控除・障害者控除適用前の相続税の金額が少なかったり、未成年者控除・障害者控除が多額に適用できる場合は、未成年者控除額・障害者控除額が使いきれずに残ってしまう、ということも起こり得ます。

そのような場合には、その残りの金額を、その方の扶養義務者の相続税から差し引くことができます。

この未成年者控除・障害者控除は養子の方でも適用できます。

実子がいない場合、法定相続人の数に算入できる養子の方の人数は2人になります。

5人を養子にした場合には、3人については各非課税枠を計算する際、ノーカウントということになります。

しかし、未成年者控除や障害者控除を適用する場合には、そのような人数制限はありません。

相続税法基本通達
63-1 相続人の数に算入される養子の数の否認規定の適用範囲
法第63条の規定が適用される事項は、法第12条第1項第5号の保険金の非課税限度額、同項第6号の退職手当金等の非課税限度額、法第15条第1項の遺産に係る基礎控除額及び法第16条の相続税の総額に関する事項に限られるのであるから留意する。

養子縁組をした5人とも未成年であれば、全員分の未成年者控除を適用することができます。

ここで注意すべき点が2つあります。

養子縁組しただけではダメ

相続税法
第19条の3 未成年者控除(一部抜粋)
相続又は遺贈により財産を取得した者が相続人に該当し、かつ、20歳未満の者である場合においては、

上記の太字になっているところをご覧いただくと、財産を取得した方でないと適用できない、ということがお分かりになると思います。

つまり、養子縁組をしただけではダメなのです。

家庭裁判所の許可が必要な場合がある

未成年者を養子にする場合には、家庭裁判所の許可が必要な場合があります。

裁判所HPより(一部抜粋)
未成年者を養子とする場合は、家庭裁判所の許可が必要です。
ただし、自己又は配偶者の直系卑属(子や孫等)を養子とする場合は、家庭裁判所の許可は必要ありません。

こちらの記事もご覧ください。

想う相続税理士秘書

相続税の節税目的の養子縁組は無効?

想う相続税理士

こちらにもご注意を。

相続税法
第63条 相続人の数に算入される養子の数の否認
第15条第2項各号に掲げる場合において当該各号に定める養子の数を同項の相続人の数に算入することが、相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合においては、税務署長は、相続税についての更正又は決定に際し、税務署長の認めるところにより、当該養子の数を当該相続人の数に算入しないで相続税の課税価格及び相続税額を計算することができる。