相続税専門税理士の富山です。
今回は、「贈与税の配偶者控除を利用して、その後の所得税の軽減を図ったりするのはアウト」ということについて、お話します。
「おしどり贈与」を知っていますか?
税務上の用語ではありませんが、別名「おしどり贈与」というモノがあります。
正式には、「贈与税の配偶者控除」というモノなのですが、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、ご自宅、または、ご自宅の購入資金を贈与した場合に、2,000万円の非課税枠が適用できる、という制度です。
20年間連れ添ったご夫婦へのご褒美みたいなものです。
非課税で配偶者に贈与ができるということは、相続税対策になりそうですよね。
贈与には一般的には110万円の非課税枠しかないワケですから、2,000万円を110万円ずつ非課税で贈与するとなると、19年かかります。
それが一度に贈与できるワケですから、魅力的ですよね。
その上、この制度を使って贈与した場合には、「3年以内贈与加算」の適用対象外になるんです。
どういうことかというと、「相続税がかかりそうだ!」ということで、慌てて贈与しても、それが無効になる仕組みがあるんですが、この贈与税の配偶者控除については、慌てて贈与してもOKなんです。
想う相続税理士
でも、贈与税の配偶者控除により取得した財産については、贈与時期が3年以内に該当しても、相続財産に加算しなくてもいい、極端な話をすれば、亡くなる直前に贈与しても相続税が課税されない、ということになります。
想う相続税理士秘書
実際にやった方がいいかどうかというと・・・
この贈与税の配偶者控除を適用する贈与、実際に実行する場合には、検討すべきことがいくつかあります。
移転に伴うコストが割高
贈与により財産を移転する場合には、相続により財産を移転する場合に比べて、登録免許税が割高になります。
また、相続だったらかからない不動産取得税が、贈与の場合には課税の対象となります。
相続税の計算においても配偶者はちゃんと優遇されている
2,000万円の非課税贈与というと、大変魅力的に思われるかもしれませんが、相続のときには、配偶者には1億6,000万円の非課税枠があります。
あえて生前に贈与しなくても、相続でラクラク非課税で移転できる可能性があります。
引き続き住む見込みであることが大前提!
この贈与税の配偶者控除については、ネットや書籍の記述において、贈与後に家を売却するということを絡めてメリットが謳われているのをよく見かけます。
例えば、配偶者が贈与を受けた自宅を売却すれば、配偶者の手元にお金ができるので、それによって老後の介護などの費用を自分で賄うことができるとか、自宅の全部を贈与せず、一部だけ配偶者に贈与することで、自宅をご夫婦の共有にすることにより、自宅を売却する際、マイホームを売った時の3,000万円の特別控除をダブルで(3,000万円×2人分=6,000万円)受けられる、というようなことが書かれていたりします。
しかし、これには注意が必要です。
なぜかというと、贈与税の配偶者控除は、その後も住む見込みであることが要件になっているからです。
相続税法
第21条の6 贈与税の配偶者控除(一部抜粋)
かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みである場合においては、その年分の贈与税については、課税価格から2,000万円を控除する。
売却を前提とした贈与の場合には、この特例の適用は認められません。
想う相続税理士