相続税専門税理士の富山です。
今回は、土地と建物を共有で所有していて、その建物を第三者に賃貸している場合の、その土地の評価における権利関係について、お話します。
貸家の敷地は安く評価できる
貸家の敷地の用に供されている宅地を、「貸家建付地」と言います。
持っている土地の上に建物を建築して、それを他の人に貸している、というような宅地です。
貸家建付地の評価は、次の算式で計算されます。
亡くなった方が1,000万円の土地の上にアパートを建てていて、その地域の借地権割合が40%であり、借家権割合30%、アパートが満室だったとすると、上記の算式に当てはめた場合、
1,000万円-1,000万円×40%×30%×100%=880万円
と計算されます。
つまり、使っていない土地に比べて12%評価が下がる、ということになります。
アパートに住んでいる方の権利の分だけ、土地の評価が下がるということです。
土地と建物が同じ割合で共有だった場合には?
アパートの建物とその敷地の土地があり、亡くなった方とその奥様が、そのアパートと土地を半分ずつ共有で所有していた場合、貸家建付地の評価はどのようにするのでしょうか?
貸家建付地の評価は、土地も建物も同じ所有者の場合に出てくる話です。
このケースですと、旦那さん所有の土地(1/2)の上に、奥様所有のアパート(1/2)が建っている(つまり所有者が上下別)、とも考えることができます。
想う相続税理士秘書
このケースのように、土地の共有割合と、建物の共有割合が同じ場合には、相互に対する土地の貸付けはなかったものとして取り扱われますので、旦那さんの土地の上に旦那さんのアパートが建っていてそれを他人に貸している、奥様の土地の上に奥様のアパートが建っていてそれを他人に貸している、と考えます。
所得税法基本通達
33-15の2 共同建築の場合の借地権の設定(一部抜粋)
一団の土地の区域内に土地を有する2以上の者が、その一団の土地の上に共同で建築した建物を区分所有し、又は共有する場合
(1)各人の所有する土地の面積又は価額の比と各人の区分所有する部分の建物の床面積の比又は共有持分の割合とがおおむね等しい場合 相互に借地権の設定はなかったものとする
土地と建物が異なる割合で共有だった場合には?
上記のケースでは、土地と建物の共有割合がイコールでしたが、これが異なる場合にはどうなるでしょうか?
例えば、最初の画像のように、土地は1/2ずつの割合で共有しているものの、建物は旦那さんが1/4、奥様が3/4の割合で共有しているような場合です。
この場合、旦那さんの土地の持分(1/2)のさらに半分(1/2×1/2=1/4)は、自分の所有している建物の敷地ということになります(建物の持分が1/4のため)ので、この部分は貸家建付地の評価をすることができます。
残りの1/4部分については、旦那さんの土地の上に奥様の建物が建っているということになります。
所得税法基本通達
33-15の2 共同建築の場合の借地権の設定(一部抜粋)
一団の土地の区域内に土地を有する2以上の者が、その一団の土地の上に共同で建築した建物を区分所有し、又は共有する場合
(2)上記(1)以外の場合 建物の所有割合が土地の所有割合に満たない者の当該満たない割合に対応する部分の土地についてのみ貸付けが行われたものとする
その部分は、旦那さんが奥様に土地を貸している、ということです。
土地を借りる場合には、第三者間であれば地代を払うワケですが、配偶者間であるため、地代のやり取りは通常行わないでしょう。
そうすると、残りの半分の部分(1/2×1/2=1/4)は、旦那さんがタダで奥様に貸している、ということになります。
タダで貸すことを「使用貸借」と言いますが、使用貸借契約は借地借家法が適用されません。
したがって、アパートに住んでいる人の権利が土地に及ばないため、その残りの1/4部分については、貸していないのと同じ評価(安く評価できない)ということになります。
館林市に出張訪問する相続税専門税理士から一言
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