相続税専門税理士の富山です。
今回は、みなし贈与について、お話します。
贈与は契約によって成立する
贈与については、民法において次のように規定されています。
民法
(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
つまり贈与は、財産をあげる方が、自分の財産をタダで相手方にあげますよ、という意思表示をし、もらう方が、これを承諾することによって成立する契約なのです。
ですから、あげる方が「あげますよ」と言わない場合には、贈与が成立しない、ということになります。
これが大原則です。
しかし、実はこの民法上の贈与とは別に、「相続税法において規定されている贈与」があります。
相続税法上の贈与=みなし贈与
国税庁ホームページ(一部抜粋)
相続税法においては、法律的には贈与により取得したとはいえないが、財産を取得した事実や経済的な利益を受けた事実によって、実質的に贈与と同様の経済効果が生ずる場合には、税負担の公平の見地から、その取得した財産を贈与により取得したものとみなして贈与税の課税財産とする旨規定されている(相続税5条から9条の5)。
相続税法
第9条(一部抜粋)
対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額を当該利益を受けさせた者から贈与により取得したものとみなす。
つまり、財産をあげる方が、自分の財産をタダで相手方にあげますよ、という意思表示をしなくても、贈与税の課税対象になり得る、ということです。
財産をあげなくても相手をトクさせることにより贈与になる場合がある
財産をあげるという行為であれば、贈与が見えやすくなりますが、財産をあげるという行為ではなくても、みなし贈与に該当する場合があります。
例えば、物を安く相手に売る場合です。
父親が自分の土地を子供に500万円で売ったとします。
しかし、その土地が2,000万円の価値がある土地だとしたらどうでしょうか?
本来であれば、子供は2,000万円のお金を払わなければいけないハズです。
しかし、500万円の支出で済んだワケですから、差額の1,500万円分トクしている、ということになります。
また、お金の貸し借りによりみなし贈与が発生する場合もあります。
親が子供に「貸した」と言いながら、子供が全く返済しなかったり、または、親が返済をしなくてもいいと言うような場合です。
その他、無利息による貸し借りの場合も、みなし贈与に該当する場合があります。
想う相続税理士
相続税法基本通達
9-10 無利子の金銭貸与等(一部抜粋)
ただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合には、強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする。