相続税専門税理士の富山です。
今回は、生命保険契約の契約者を変更した場合の課税について、お話します。
生命保険契約には財産的価値がある
相続の際、亡くなった方が自分ではなく他の方にかけていた生命保険契約がある場合、自分にかけていない保険(被保険者が亡くなった方ではない保険)ですから、保険金自体は支払われません。
しかし、その生命保険契約自体に価値があります。
解約したらお金が戻ってきますので、亡くなった日時点における「解約返戻金(解約したら返ってくるお金)相当額」を財産として申告することになります。
つまり、契約者であればその契約を解約してお金に変えることができる、ということです。
実際の保険事故が発生しなくても、保険はお金になる、ということです。
契約者を変更すると贈与になる?
契約者であれば、その契約を解約してお金に変えることができるワケですから、契約者を変更した場合、新たな契約者にその価値が移転します。
「ということは、契約者を変更した場合には、旧契約者から新契約者に対する贈与が発生するのでは?」とお思いになる方もいらっしゃるかもしれませんが、保険料を負担していない保険契約者の地位は、課税上は特に財産的な意義がないと考えられているため、契約者を変更したからといって、すぐに課税が生じることはありません。
しかし、保険契約者としてその契約を解約した場合には、解約返戻金相当額のお金を実際に収受することになりますから、その時に旧契約者(保険料負担者)からその解約返戻金相当額の贈与を受けたものとして、贈与税の課税を受けることになります。
旧契約者が亡くなると相続税が課税される
一番怖いのは、この旧契約者が亡くなるタイミングです。
旧契約者が亡くなると、新契約者は死亡日時点における解約返戻金相当額のお金を旧契約者から相続(または遺贈)により取得したものとみなされます。
つまり、契約変更により自分のものにした保険契約は、旧契約者の死亡の時点で相続税の課税の対象となるのです。
亡くなった方(旧契約者)の相続税の申告をしようとする場合に、この保険契約がもれてしまう危険性が非常に高いので、ご注意を。
新契約者に名義が書き換えられた時に課税を受けていないこともあり気が抜けてしまうと、もうこの保険は自分のものだ、と新契約者も思ってしまっていて、完全なノーマークになってしまうのです。
この調書により、新契約者に相続財産が発生していることを、税務署は簡単に把握します。
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例えば、払い込んだ保険料総額の7割を旧契約者が、3割を新契約者が払い込んでいる場合、解約返戻金相当額(例:1,000万円)の7割(700万円)が相続税の課税対象となります。
どういうことかというと、その方が亡くなった方から亡くなる前3年以内に贈与により取得した財産についても、相続税の課税対象になる、ということです。
例えば、亡くなった方が孫2人(A・B)に毎年110万円の贈与をしていて、Bに対して上記の保険契約の変更をしている場合、Aについての3年以内の贈与330万円については相続税の課税対象とはなりませんが、Bについては解約返戻金相当額+330万円が相続税の課税対象となります。
つまり、Bは上記の保険契約が相続財産として降りかかってくるだけでなく、その降りかかったことにより生前の贈与についても相続税の課税対象に追加されることになりますので、ご注意を。
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