相続税専門税理士の富山です。
今回は、遺産分割協議を行って、相続税の申告書を提出した後に、遺言書が見つかった場合の対応について、お話します。
遺言書がなければ遺産分割協議書を作成して遺産分けをする
遺産分けには順番があります。
遺言書があれば、その遺言書に従って遺産分けを行います(その遺言書が有効であることが前提です)。
遺言書がなければ、遺産分割協議(遺産分けの話し合い)をして遺産分割協議書を作成し、遺産分けを行います。
この遺産分割協議書は、相続人全員の判子(実印)が必要です。
1人でも判子を押さなけば、遺産分けができません。
相続人のモノに一度なっているから贈与になる?
遺言書がなかったため、遺産分割協議書を作成して遺産分けを行い、それに応じた相続税の申告も終わっているとします。
ところが、その後、遺言書が見つかったという場合、どうなるでしょうか?
先ほどお話したように、遺産分けには順番があり、遺言書が優先されます。
相続人全員の合意があれば、遺産分けをやり直す必要はありません(相続人以外の受遺者がいる場合を除く。また遺言執行者の同意も必要)が、合意が得られない場合、遺言に基づく遺産分けを行うことになります(遺留分の侵害がある場合を除く)。
この場合、例えば、遺産分割協議において長男が相続した土地が、遺言書によると次男に相続させるという内容になっていた場合、遺産分割協議においていったん長男のモノとなっているワケですから、遺言により次男が相続すると、長男から次男への贈与に該当し、次男は贈与税を払うことになり、長男は相続税の払い損になるのではないか、という疑問が生じる方がいらっしゃるかもしれません。
通達にも次のように書かれています。
相続税法基本通達19の2-8分割の意義(一部省略)
当初の分割により共同相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は、同項に規定する分割により取得したものとはならないのであるから留意する
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この場合、下記に該当するため、長男は相続税の還付を請求することができ、次男は贈与税ではなく、相続税を納めることになります。
相続税法第32条更正の請求の特則(一部省略)
次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額が過大となつたときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求をすることができる。
四 遺贈に係る遺言書が発見され、又は遺贈の放棄があつたこと。
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