相続税専門税理士の富山です。
今回は、内縁の妻に対する生活費の贈与が、非課税になるかどうかについて、お話します。
家族がお金を出して支え合うのは当たり前
税法上、扶養義務者に対する生活費の贈与は、非課税となっています。
相続税法第21条の3(一部抜粋)
次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
・扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
内縁の妻は扶養義務者ではない?
この「扶養義務者」は、税法上、次のように定められています。
相続税法基本通達1の2-1(一部抜粋)
「扶養義務者」とは、配偶者並びに民法の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいうのであるが、これらの者のほか三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱うものとする
「内縁の妻」についての言及はありません。
税務は実態で判断
過去の裁判例を見てみると、内縁については、婚姻の届出はしていないけれども婚姻関係と実態的には同じ、という考え方が示されています。
昭和37(ラ)33 財産分与審判に対する即時抗告事件
昭和38年6月19日 広島高等裁判所(一部抜粋)
・内縁が実質的には法律上の婚姻と同一の夫婦共同生活関係を意味するものであり、ただ単に届出を欠くに過ぎないというものであるとすれば、戸籍法所定の届出を婚姻の成立要件とした民法の理念に反しないかぎりこれに対し婚姻と同一の法律的取扱いをすることは、あながち不当とはいえない
・夫婦間の同居、協力、扶助の義務、婚姻費用の負担、日常家事債務の連帯責任、帰属不明財産の共有推定等の婚姻の効果は、いずれも内縁についてもこれを認めてしかるべきである
・これらは夫婦間の共同生活関係自体を規整するものであつて、これによつて第三者に不利益を与える虞れもないから、戸籍簿上公示された
婚姻に限つてこれを認めるべき絶対の必要なく、一方内縁も事実上の夫婦共同生活関係である以上、これらの法律効果を認めてその妥当な規整をはかる必要のあることは法律上の婚姻と同様であるからである
想う相続税理士