相続税専門税理士の富山です。
今回は、夫が亡くなった場合に、妻が夫の兄弟姉妹と一緒に相続することを避けられるか、についてお話します。
相続人には順番がある
生命保険金受取人の「死亡」と「結婚」と「離婚」に注意! こちらの記事で、まず、配偶者は必ず相続人になります。
配偶者以外の方については、
①子供
②父母
③兄妹姉妹
の順に相続人になります。
とお話しました。
例えば夫が亡くなる場合で、子供(①)・父母(②)がいなければ、夫の兄弟姉妹(③)が相続人になります。
この場合に妻が、「夫の財産は夫婦2人で築き上げたものなので、夫が亡くなった時には、全財産を自分が相続したい、夫の兄弟姉妹には渡したくない」と思った場合、それは可能なのでしょうか?
第1順位(子供)を登場させる
養子縁組をすると、その養子は①の子供になります。
③の兄弟姉妹より、順位が上なので、その養子が相続人となり、兄弟姉妹は相続人ではなくなります。
遺留分の検討
相続人である子供には、遺留分が認められています。
遺留分とは、「法律上保障される最低限の遺産の取り分」のことです。
その養子の方が「遺留分侵害額の請求」をした場合には、妻はその侵害額に相当する金銭を支払わなければなりません。
そうなると、妻は全財産を相続することができなくなります。
法定相続人の数が変わる
養子縁組をしない場合には、「妻(1人)+兄弟姉妹の人数」が、「法定相続人の数」になります。
養子縁組をした場合には、「妻(1人)+養子の人数(実子がいない場合の普通養子は2人まで)」が、「法定相続人の数」になります。
つまり、養子縁組をするかどうかで、法定相続人の数が変わるのです。
「法定相続人の数」が多ければ多いほど、相続税の非課税枠(遺産に係る基礎控除額)や、生命保険金・死亡退職金の非課税枠が大きくなり、相続税が安くなります。
また、養子縁組は、相続税の総額の計算にも影響します。
相続税の総額は、法定相続人が法定相続分で取得したものとみなす計算過程があることから、法定相続人の数が多くなれば、頭数が多くなることにより、税率を下げられる可能性があります。
また、法定相続分で取得したものとみなされる際、養子縁組をした場合の妻の法定相続分は1/2、養子縁組をしなかった場合の妻の法定相続分は3/4と変わってくるため、これも税額に影響を及ぼします(養子縁組をしないことが、相続税を高くする要因となります)。
遺言を書く
夫が、全財産を妻に相続させる旨の遺言を書いている場合には、兄弟姉妹が相続人だとしても、妻が全財産を相続することができます(もちろん、その遺言が有効であることが前提)。
遺留分の検討
相続人である兄弟姉妹には、遺留分が認められていません。
ですから、妻が遺言により全財産を相続した場合には、そのまま(「遺留分侵害額の請求」ができない)ということになります。
想う相続税理士