相続税専門税理士の富山です。
今回は、預貯金などが相続財産に該当するかどうか争われた裁判について、感じたことをお話したいと思います。
亡くなった方が資産運用するため自分の名義にした子供の預貯金があった
まず、事実の流れはこうです。
(2)相続人である妻と娘が相続
(3)娘に子が二人いる
(4)娘が死亡②
(5)妻が死亡③
(6)相続人である娘は既に亡くなっていて、代わりに子2人が相続
概要としては、こんな感じです。
判決により、その2/3部分は、妻の相続財産から除外された
名義人=所有者ではない
よくあるのは、亡くなった方の相続人や親族の名義の預貯金があって、それについては、実態としては亡くなった方のモノなので、亡くなった方のモノとして相続税の申告をしなければならない、という名義預金の話です。
例えば、祖父が孫にあげるために、孫の名義で預金を積んであげていても、孫がそれを知らなければ、贈与は成立しないので、その孫名義の預金は祖父のモノと認定されてしまいます。
ちゃんと贈与したいのであれば、孫にそれをきちんと知らせ、その贈与があったことを明らかにできるようにしておく必要があります。
この事例では、その逆パターンで、亡くなった方名義の預貯金が、実態としては相続人のモノ(相続財産ではない)、ということが裁判で認定されました。
「税務署がどう見るか」を考える
娘がお亡くなりになった際、この子2人は相続税の申告をされていませんでした。
申告をしていないとなると、「申告しないということは、娘に財産がないということ、ということは、妻が夫の財産を全部相続したということではないか?」と税務署が考えるのもおかしくありません。
また、娘のお金を妻が運用するにしても、それは借りて運用しているのか、それとも、贈与を受けて運用しているのか、明確にしておく(きちんと説明できるようにしておく)必要があったと思います。
仲の良い親族間のお金のやり取りは、お互いを信頼し合っているため、書類を残そうとはしないかもしれません。
名義についても、無頓着かもしれません。
でも、その取引を冷静に第三者の目で再度、検討してみてください。
「これって、こういう風に税務署に見られちゃったらヤバくない?」
「この財産をこのままにしておいたら、こういう風に税務署に見られちゃうんじゃない?」
と思うことがあれば、すぐに対処しましょう。
疑われないようにする、内容をきちんと説明できるようにしておく、ということが重要です。
相続が起きた後では、当事者はもういらっしゃいませんから。
想う相続税理士