相続税専門税理士の富山です。
今回は、「地積規模の大きな宅地の評価」の注意点についてお話ししたいと思います。
広い土地は安く評価できる【地積規模の大きな宅地・基本編】 以前、こちらの記事で、この「地積規模の大きな宅地の評価」の基本的な論点についてお話ししました。昔は「広大地の評価」という似たような特例がありました。
面積が500㎡・1,000㎡以上の土地を安く評価できる、という点では同じなのですが、実際の土地の値段よりかなり安く評価されることにより、富裕層の過度な節税対策に利用されたり、要件を満たすかどうかの判断が難しい場合が多い、などの問題がありました。
これらの問題を踏まえて、「広大地の評価」が廃止され、「地積規模の大きな宅地の評価」ができたので、かなり使いやすい特例となっています。
「地積規模の大きな宅地の評価」については、三大都市圏以外の地域に所在する宅地については1,000㎡以上であることが、面積の要件となっています。
では、共有になっている面積の大きな土地については、どのように面積の要件を考えればいいのでしょうか。
例えば三大都市圏以外の地域に所在する1,500㎡の土地を、Aさんが9/10、Bさんが1/10の割合で、共有で所有している場合です。
この場合、土地全体で考えるのであれば、1,500㎡ですから、1,000㎡以上ということで、面積の要件は満たしています。
しかし、Aさん・Bさんそれぞれで考えた場合には、それぞれの所有者の持分に相当する面積は、
Aさん:1,500㎡×9/10=1,350㎡
Bさん:1,500㎡×1/10=150㎡
ということになります。
Aさんの方は、持分に相当する面積で計算しても、全体の面積で計算しても、どちらも1,000㎡以上ですから、面積の要件を満たしていそうです。
Aさんが亡くなった場合には、「地積規模の大きな宅地の評価」の特例が適用できそうです。
それ対して、Bさんの方は、全体の面積で考えた場合には、面積の要件を満たしていますが、持分に相当する面積で計算した場合には、1,000㎡に比べて、かなり小さな面積になってしまうため、要件を満たしそうにありません。
Bさんが亡くなった場合には、特例は適用できないのでしょうか。
この場合、全体の面積1,500㎡で、Aさん・Bさんそれぞれについての面積の要件を判定するため、Bさんについても、他の要件を満たせば、「地積規模の大きな宅地の評価」の特例を適用することができます。
AさんもBさんも持分の違いはあっても、同じ1,500㎡の土地を所有してることには変わりません(全部じゃないけど)。
そして、その土地の利用のされ方は、持分に応じて利用されているワケではなく、全体として利用されているワケですから、OKなのです。
参考 地積規模の大きな宅地の評価-共有地の場合の地積規模の判定国税庁