相続税専門税理士の富山です。
今回は「相続税の基礎控除額」についてお話をしたいと思います。
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絶対に無視できないのが「相続税の基礎控除額」
「相続税が出るかどうかの判断」、また、実際に「相続税が出る場合の相続税の計算」の際に、無視できないのが、この「相続税の基礎控除額」です。
この「相続税の基礎控除額」についてお話をして、さらに相続税がかかる場合には、その相続税の計算と、この「相続税の基礎控除額」がどのように関係してくるのかについて、お話をしたいと思います。
相続税の計算方法
まず、「相続税の基礎控除額」のお話をする前に、相続税がどのように計算されるかについてお話をしたいと思います。
相続税の計算は、必ず、亡くなった方の財産を合計するところから始まります。
何が言いたいかというと、各相続人が、自分が相続した財産の金額だけを元に相続税を計算することはできない、ということです。
例えば、父が亡くなって、相続人が長男と次男の2人で、長男と次男がそれぞれ財産を相続したというような場合、その長男が相続した財産の金額だけでは、長男の相続税は計算できないのです。
相続税は、各相続人毎に、個々に(長男次男別々に)相続税を計算する訳ではなく、まずは相続財産全体(長男が相続した財産+次男が相続した財産=全財産)の金額をベースに相続税を計算するのです。
各相続人の相続税は「割合計算」する
「合計しちゃったら、各相続人毎の個々の相続税が計算できないのでは?」とお思いになるかもしれません。
各相続人の相続税はどのように計算するかというと、全体の財産に対する相続税が計算できたら、割合計算で求めます。
財産を半分ずつ相続したのなら、相続税も半分ずつ納める、ということです。
全体の財産に対する相続税が100万円で、長男が相続した割合が60%なら、長男の相続税は100万円×60%=60万円、次男は100万円×40%=40万円、ということです。
ここで「相続税の基礎控除額」の出番
このように、全体の財産の金額をベースに相続税を計算するのですが、その全体の財産の金額に対して相続税を計算するのかというと、そうではなく、その全体の財産の金額から、「相続税の基礎控除額」を引いた残りに対して、一定の税率をかけて相続税を計算しますよ、という仕組みになっています。
ですから、相続財産全体の金額が「相続税の基礎控除額」を超えていれば、その超えている部分に対して相続税が計算され、超えなければ相続税はかからない、ということになります。
つまり、「相続税の基礎控除額」は「相続税の非課税枠」と考えることができます。
「相続税の基礎控除額」の計算方法
実際に、「相続税の基礎控除額」はどのように計算されるのかというと、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
です。
「法定相続人」は、「民法で決められた財産を相続できる人」というふうに考えてください。
先ほどの例では、長男と次男の二人が相続人(法定相続人)なので、
3,000万円+600万円×2人=4,200万円
が相続税の基礎控除額となります。
このケースで、例えば、父の残した財産が5,000万円だったとすると、
5,000万円-4,200万円=800万円
の部分に対して、相続税が計算されるということになります。
詳しい説明は省略しますが、「相続税の基礎控除額」を引いた残りが1,000万円以下の場合には、相続税の税率は最低税率の10%となりますので、この場合の相続税は、800万円×10%=80万円と計算されます。
長男と次男2人合わせて80万円の相続税を納めるということです。
相続税の税率に惑わされちゃダメ!
10%とだけ聞くと、「そんなに税金が取られるのか!」と思ってしまうかもしれませんが、今までの計算過程をよく見直してみてください。
全体の財産の金額5,000万円のうち、「相続税の基礎控除額」相当額の4,200万円の部分は横に置いておいて、残りの800万円に対してしか相続税が計算されていません。
結果として、5,000万円の財産に対して、80万円の相続税がかかるということですから、
80万円÷5000万=1.6%
ということで、相続税の負担割合は、2%以下ということになります。
つまり、「相続税の基礎控除額」相当額に対しては相続税が計算されない分だけ、相続財産全体に対しての相続税の負担ということを考えた場合には、それほど大きな税負担にはならないようになっている、ということです。
相続税を計算する上で、「相続税の基礎控除額」は必ず加味しなければなりませんが、もらった財産のうち、どれくらいの相続税が取られるのか(課税されるのか)という「実質的な税負担率」を計算する際には、「相続税の基礎控除額」を考慮するようにしましょう。
想う相続税理士