【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続税の2割増し課税は取得したのが贈与財産のみの場合でも適用される場合がある

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続税の2割増し課税(相続税額の2割加算)について、お話します。


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相続で財産を取得しなければ相続税は課税されない

Aさんが亡くなり、その相続人が兄Bさん・弟Cさんの2人だとします。

2人とも、Aさんが亡くなる2年前に、暦年課税贈与によりそれぞれ現金100万円の贈与を受けていました。

2人の遺産分割協議により、Aさんの遺産については、「兄Bさんが全財産を相続する」と決定しました。

この場合、兄Bさんが贈与により取得した現金100万円は、相続開始前3年以内の生前贈与加算により、相続税の対象となります。

弟Cさんが贈与により取得した現金100万円は、弟Cさんが相続で財産を取得していないので、生前贈与加算の対象とならず、相続税の対象にもなりません。

兄弟が相続すると相続税が2割増しで計算される

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.4157 相続税額の2割加算
相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)および配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。

兄Bさんは、二親等の血族であり、「一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)および配偶者以外の人」に該当するため、相続税が2割増しで計算されます。

贈与により取得した現金100万円に対応する相続税も2割増しです。

遺産分割協議の対象とならない相続財産もある

「兄Bさんが全財産を相続する」と決定しても、二男Cさんが相続財産を取得できる場合があります。

例えば、死亡保険金です。

Aさんが、受取人を弟Cさんとする生命保険に加入していた場合、Aさんの死亡により、弟Cさんに死亡保険金が支払われれば、その死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象となります。

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.1750 死亡保険金を受け取ったとき
受取人が被保険者の相続人であるときは、相続により取得したものとみなされ、相続人以外の者が受取人であるときは遺贈により取得したものとみなされます。

「俺は何も要らないよ」と言って、弟Cさんが「兄Bさんが全財産を相続する」という遺産分割協議に署名押印したとしても、その死亡保険金は相続により取得したものとみなされ、相続税の課税対象になります。

そうすると、弟Cさんは相続で財産を取得していることになるので、弟Cさんが贈与により取得した現金100万円は、相続開始前3年以内の生前贈与加算により、相続税の対象となります。

弟Cさんも、兄Bさん同様、Aさんの二親等の血族であり、「一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)および配偶者以外の人」に該当するため、相続税が2割増しで計算されます。

贈与により取得した現金100万円に対応する相続税も2割増しです。

贈与財産のみの場合でも相続税の2割増し課税が適用される場合

遺産分割協議や遺言により財産を取得せず、(例えば死亡保険金等のように)相続の発生により財産をみなし取得しない場合でも、贈与財産に相続税が2割増し課税される場合があります。

それは、「孫や孫養子の方等」「一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)および配偶者以外の人」が相続時精算課税による贈与により財産を取得した場合です。

国税庁HP・質疑応答事例(一部抜粋加工)
相続時精算課税適用者に係る相続税額の加算
【照会要旨】
養子D(甲の直系卑属である孫)は、甲から贈与を受けた財産について相続時精算課税の適用を受けていました。甲の死亡に係る相続税の計算において養子Dの相続税の課税価格に算入される当該相続時精算課税適用財産について、相続税額の加算の規定は適用されますか。
【回答要旨】
相続時精算課税適用者であるDは、甲の直系卑属であり、かつ、甲の養子に当たる者ですから、相続時精算課税適用財産について相続税額の加算の規定が適用されます。
なお、この場合において、Dの直系尊属が甲の死亡前に死亡し、又は相続権を失ったため、Dが代襲して甲の相続人となっている場合には、相続税額の加算の規定は適用されません。

想う相続税理士

上記の養子Dさんが甲さんからの贈与について、1年前に相続時精算課税を選択し、2年前に暦年課税贈与により現金50万円を受けていたとします。

この場合、その50万円は生前贈与加算の対象となり、相続税が課税されます。

また、その贈与により取得した現金50万円に対応する相続税も2割増しで計算されます。